なのに、



じりじりと肌を焼くような暑さにまいって、それから逃げる為だけに対して面白くもない図書館へ向かう。
勉学に勤しむ中高生。優雅に読書を楽しむ中高年。お静かに、そう書かれたプレートの前ではしゃぐ小学生。あ、怒られた。
手に持ったうちわで顔に風を当てる。服の中とか暑いと言えば暑いけど、人間ってもんはどうしてか街中を全裸で歩いたりしない。そういうもんになっている。まぁ、今時全裸で歩いてたら速攻お縄にかかるかな、と頭の中で付け足した。
人のいない、難しそうな分厚い本が並ぶ場所で冷たいタイルの上に寝転がる。館員さんに見つかれば余裕で注意をくらうだろう。でも、"知ってる"誰かがここに来るのなんて、閉館して床の掃き掃除をするときくらい。
って思ってた時期がオレにも会った。

「なにしてんの」
「……涼んでる…」

見慣れた重たそうな眼鏡に黒い髪、たれ目がち目は青っぽくてなんだか涼しそう。
誰も来ないって思ってたのに、でも、黒色が来てどっかで嬉しいとか思ってる。タンマツで連絡とったわけでもないのにこうやって会えてる。
黒色は、オレの黄色い髪をするりと撫でて変な顔をする。どう変って聞かれたら、ちょっと答えにくいんだけどさ。でも、変。へん。

「変…」
「えっ…」
「お前といると、変な感じだ」

一瞬、考えていることがばれたんじゃないかって思ったけど、どうやらそうじゃないようで。複雑そうな表情をしている黒色の髪にそっと、手を伸ばした。ゆっくり、小動物を怖がらせないように、そんな感じ。
まっすぐ伸びたその毛先に指先がちょっと触れ、た。

「った……」

ぱり、となにかに弾かれたように手を離す。恐らく静電気でも起こったのだろう。そう思いながら上半身を起こした。その瞬間、感じる視線。
その方向に顔を上げると、眉を寄せて真剣な表情の黒色。どうしたのかと首を傾げると、数拍置いた後に、なんでもない。と言われた。それがなんだか苦しくて、悲しくて、ぎゅっと目を閉じた。




《なのに、》次の瞬間には、何かが抜け落ちたような気がした。

-6-

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