それが、



夢を見る。幸せそうな女の人、その足元で、これも幸せそうに笑顔を浮かべる黒い髪の少年。2人は手を繋いでどこかへ歩いていく。
でもそれは、一瞬にして変わる。変わった。変えられた。
彼方此方に瓦礫が散乱して、少年が大粒の涙を流して何かを叫んでいる。大きな瓦礫の下。真っ赤に染まった人の顔。ぞくり、と寒気が襲ってくる。先ほどまで笑っていた女の人の顔が、赤に、染まる。

「っ、?」

ぴたり、今まで聞こえていた叫び声が消えた。不思議に思って視線をそこに戻す。
黒い髪の少年は、もういなかった。代わりに、黄色い髪の少年が女の人の前でしゃがみこんでいる。
タンポポみたいな黄色い髪。風なんか吹いてないのに、ふわりふわりと揺れるそれに目を奪われていると、それがゆっくりと立ち上がる。
ふと、視線が交わる。その瞬間、金髪の男の子が、笑った。先ほどの黒髪の男の子みたいに。少年






「っ!」
「猿比古?大丈夫か?」
「え、あ…」

まだはっきりしない頭が、状況を理解しようと忙しく回る。さっきと何も変わらない図書館だ。自分はいつから眠っていたのか、タンマツを確認すると10分も経っていない。隣では相変わらず八田が宿題を広げていて、その隣には、あいつもいる。夢で見た、タンポポみたいな黄色い髪をしたあいつ。どうして、あの少年とあいつを同じ人物だって思ったのかは分からない。でも、あの少年がそのまま大きくなったような笑顔。
なぁ、と言おうとして、口を閉じる。
あいつの名前が、思い出せない。

「…………」

いや、そもそも、知らない。知らないんだ。おれは知らない。あいつのクラスも、学年も、名前も。
服の中にアイスでも放りこまれたような冷たさが全身に走る。

「オレの顔、何かついてる?」
「いや…なんでもない…」

不思議そうな顔をしたそいつは、そっか、と言って八田の広げている宿題に赤い丸を付けていく。手伝ってんのかよ。呆れてため息を吐くと、あいつが楽しそうに笑っている。
笑顔が、夢と重なる。
おれの知らない何かが何処かで動いている。その中心はきっとあいつで、それに触れたら、この心地のいい空間はきっと壊れてしまうのだろう。

「あ、猿比古と話してたんだけどよ」

三人で部屋借りてアジトにしようぜ。と手を止めて言う八田。驚いたように目を丸くしたそいつは、ふ、と笑っておれと八田に向き直る。

「二人と一緒なら、なんでもいい」

だって、

「二人とやること喋ること、全部オレの宝物だから」

ふわり、黄色が揺れた。




《それが、》壊れないように、壊さないように。

-7-

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