ここが、



12月。王様のことは茶色と黒色には話していない。亜麻色が、キミにはきっと君の知らない不思議な力がある。とかなんとか。マスターにも誰にも言うな。とか言われたからだ。どうして言っちゃだめなのか、なんて考える間もなくオレは頷いた。そうした方がいいと思ったから。でも、茶色と黒色もすぐにこっち側に来るような予感はした。三人一緒じゃなきゃつまらない。

「うおー!すげーかっけーよこれ!」
「よかったな」
「何かの戦隊の隊員がつけてるやつみてえ!」

ロフトで、パソコンの前に座った黒色が、お前の頭は小2以下か、と言うと、茶色が突っかかる。戦隊ってオレにはよく分かんねぇけど、茶色がすげえって言うならすげぇんだろう。黒色が耳元にマイクみたいな機械を付けてどうだ、って感じで笑う。よくわかんないけどかっけぇ。って三人で笑い合う。

「そうだ!お前にもあるんだぜ!」
「え?」
「ちょっとはえーけど、ほら、俺と猿比古からのクリスマスプレゼントだ!」

がさごそと袋を漁って茶色が取り出したのは、くしゃりと歪んだ包装紙に包まれた何か。雑に放り投げられたそれを受け取ると、開けてみろよ!と何故か茶色の方が興奮しているように見える。ロフトの方に視線を向けると、黒色が柔らかく笑っていて、オレはようやく、不細工な犬の描かれた包装紙を破らないように開いていく。

「……これ、」
「お前のタンマツ!ずっと持って無かったろ」
「オレの?」

オレの髪みたいな黄色のタンマツ。茶色や黒色の持って居るタンマツとは少し違って、手の平サイズの小さい画面だ。
目を丸くするオレに、茶色と黒色が顔を合わせてニヤリと笑う。悪戯が成功した子供みたいに。

「無かったら不便だろ。もう中身は設定してあるからすぐにでも使える。おれと美咲の番号入れてるから、なんかあったらすぐ連絡すること、わかったか?」
「うん、うん?……ん?うん?どうやってつけるんだこれ」
「壊す前に貸せ、一通り説明するから」
「ん、」

ロフトにいる黒色にタンマツを渡すと、いつか見た青い光がパッと浮かび上がる。
ここをこうして、と説明する黒色の声に集中して青い光を見つめる。すいすいと切り替わっていく画面に眉を寄せると、上からため息が落ちてきた。

「ボケてきたジジイに教えてる気分。ま、通話とメールが出来たら問題ないだろ。あと、一緒に箱に入ってたリストバンドは?」
「これ?」
「そう、それ。このリストバンドに、このタンマツをはめて持ち歩くことも出来る。結構頑丈だから腕振り回しても外れないから安心しろ。美咲と同じ型にしてもよかったけど、こっちには…っと」

黒色がタンマツの横にあるスイッチを押すと、バチンッと何かが跳ねた。青白い光に茶色と肩を揺らすと、可笑しそうに黒色が笑う。
ここを押すとスタンガンにもなる。と黒色がタンマツを投げてよこす。黒色がやったように、横にあるスイッチを押すとばちり、光が跳ねる。茶色と顔を見合わせると、同時に声を上げた。

「すげぇ!かっけー!みてみて!」
「見てたっての!すげー!こんなのも付けてたのかよ!流石だな!」
「美咲は無駄に頑丈だけどこいつはそうでもないしな、護身用みたいなもん」
「無駄ってなんだよ!」
「む、オレだって戦えるって」

わざとらしくため息を吐いた黒色は、長い人差し指をオレに向けて、その傷は誰にやられたんだ。と指摘する。ひゅっと息がつまり、唇を尖らせる。
王様にあった日、カツアゲにあった(と聞いた)ときにできた傷。もう治りかけではあるが、絆創膏は顔にに三枚残っていた。

「も、もっと特訓すれば負けねぇよ…」
「はいはい。とにかく…タンマツ、なくすなよ」
「なくさねぇよ。二人から貰った大事なもんだしっ!」

ぎゅっとタンマツを胸の前に抱えると、茶色と黒色が笑う。それにつられてオレも笑う。

「26日、"サプライズ・パーティー"でバー"HOMRA"が狙われてる時間帯―――――その隙におれたちは《jungle》をハッキングする」

「あっと言わせてやろうぜ」

拳を吐きだして茶色がニッと笑う。

「お前等とだったら、世界だって乗っ取れる気がしてる」

世界のすげぇ奴の勢力図がちょっと変わるぜ?三人で拳を付きあわせ、ニヒルに笑う。三人でいると笑ってばかりだ。

「クソつまんねぇ世界をおれたちでひっくり返す」
「けどさ、ひっくり返しても面白くならなかったらどうするんだ?」
「絶望するしかないな。そうなったらもう、太陽に突っ込む方法でも考えるか」
「それもいいな!超イカした宇宙船造って、超クールに突っ込もうぜ!」

両手をいっぱい広げてでっけぇ宇宙船造ろうぜってはしゃぐ茶色、ロフトから快適なやつなって微笑んでる黒色。

「そのときも、三人一緒?」
「あったりめぇだ!猿比古が操縦して、おれとお前が……ええっと…バックアップだ!」
「なんだよそれ」
「カロリーなんちゃらいっぱい持って行こう」
「ほんっと、そればっかだなお前」
「太陽に突っ込むんならどれくらい必要だ…?一年分?」
「本気で持って行くのかよ」

世界をひっくり返す。なんて、出来ても出来なくても、三人一緒なら最高に楽しいんだろう。
王様たちのところも居心地が悪いということはない。でも、やっぱり。




《ここが、》オレの居場所。


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