その後
▽この後の流れ
保護先本丸所属の三日月(以降:丸月)と癒されない三日月(以降:三日月)の間で少々ピリッとするも、鶴丸成り代わり(以降:鶴成)が執り成し、なあなあで済ませる。

ほのぼの本丸居候スローライフ。ようやっと、肩の荷が降りたように気を緩める三日月にホッとする鶴成。

緩んだ三日月が、幸せの中で刃生を終わらせようとする。鶴成はそんな三日月を取り敢えずぶん殴っておいた。

審神者カッティングした三日月を、政府が探しているらしいと聞いて、謝罪と感謝の文を残し、本丸を夜逃げ気味に脱出。丸月が手引きしてくれたよ。

そんな感じで、二人で戦場駆けつつの逃避行するんじゃないですかね?
あくまで運命共同体のようなものなので、色恋沙汰には発展しません。


三日月としては鶴成は保護対象だけれど、鶴成としては三日月が自分の身を蔑ろにするのが見ていられなくて、そのうちその背を守りたい・相棒になりたいとか思うようになる。




▽書きたいところだけの詰め合わせ
・じじいとじじいと孫っぽい鶴の話
「その様な姿で生き続けるのも辛かろう」

どれ、爺が介錯してやろう。と、にこやかに言い放ったのは、この本丸に先に居た三日月宗近。俺と共に保護された癒されない三日月とは違い、こちらはほけほけお爺ちゃまである。じじいではなく、じいじ。そんな感じの三日月だ。

その言葉は、まるで親切心から紡がれたようであった。……実際親切心なのだろう。保護された、もとい、癒されない方の三日月は、笑みを深くする。その笑みが拒絶であることを、俺は知っていた。

「余計な世話だ」

ほけほけお爺ちゃまと癒されないジジイのやりとりを聞きつつ、俺は「老老介護ってこういうことをいうのかな」と現実逃避気味に考えていた。張り詰めた空気には、気付かないフリして。

「見るに堪えぬ」

ほけほけじいじが言い放つ。あっ、これ、自分と同じ存在がみっともないってんで苛ついてらっしゃる。
ほけほけお爺ちゃまは、決して癒し系というわけではない。れっきとした三日月宗近であり、そこには癒されない三日月同様、美しさへのチョモランマ級なプライドが存在していた。
多分、このほけほけじいじは、癒されない三日月の『余裕のなさ』に気付いている。その『余裕のなさ』が『三日月宗近』には似合わないというので、介錯なんて言い出したんだろう。美しくない自分に、価値はないとでもいうように。

やめて、俺の胃が死んじゃう。
これ以上状況が拗れる前にと、俺は深く息を吐きながら重い腰を上げた。





・じじいが鶴に無茶振りする話
「俺を斬れ」

こいつはいったいなにをいっているんだ。思わず真顔になった俺は悪くない。
この本丸に保護され、平和な日々を過ごして幾月かが経った頃のことだ。不意に、そんな物騒なことを三日月が言い出した。

「此処での生活は、思いの外、楽しく…心地よかった」

三日月が浮かべているのは、穏やかな笑み。まるで、もう、未練がないみたいに。

「鶴や。この俺を、幸せの中で終わらせておくれ」

縋るように、こいねがうように、三日月はその美しい声で俺に囁き、その手をそっと俺の手に重ねた。

いやそれ、俺の後味が悪くなりすぎるわ馬鹿野朗。
思わず放った俺の拳は、避けられることなく見事に三日月の顔面にヒットした。すこーん。

「やー、すまんすまん、手が滑った」

やべー、国宝級の美貌殴っちまったぜ。罰当たりなことをした気分だ。いやでも、あれはないわー、ありえないわー。
武士か! お前は武士か! 刀剣男士だから似たようなものか。いや、だがそれにしたって、何考えてんだこいつ。

その美しさで名だたる刀に数えられたが故に、美しいまま散っていきたいとでもいうのか。終わり良ければすべて良し、有終の美を飾るぜーと綺麗なまま刃生を終わらせようとしたのか。
どうして俺なんだ、どうして俺なんだ! お前がそもそも俺を手にとったんだろう!? 刃選が最悪すぎる。いや、お前は、俺の手で終わらせて欲しかったのかもしれないけれど。
でも、うん、これはない。こんなのって、ない。





・運命共同体の始まり
「君は一端の庇護者を気取っているようだが、俺にだって、君の背を守り、君の横に並ぶ権利はあるとは思わないか」

「……求愛か?」

「おいおい。こいつはそんな、浪漫溢るるお綺麗なものじゃないぜ?」

決めーた、今決めた。お前を俺の運命共同体にすると決めたった。権利とか許可とかどうでもいいや。俺はこいつが放っとけない。


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