(原作突入)
【2巻】
■ポリジュース薬
落ちてたケーキは、勿体無かったから拾って食べた。
「三秒ルール! 三秒ルール!」
俺の三秒は非常に長いのである。
【3巻】
■ボガード
「あれは誰だったんだい?」
大阪のおばちゃんです、とも言えないので、先生の問いには曖昧に笑ってごまかした。あの、人の善意に漬け込んで骨までしゃぶりつくそうというがめつさは、恐怖の極みだ。
しかしまあ、リディクラス、これって恐怖を笑い飛ばす呪文なんだな。
■幽霊
子供かよと思いながらも――いや、実際俺らは子供なんだけど――布かぶって吸魂鬼の真似して、ポッターの奴をおどかすことになった。ちゃちなお化け屋敷の幽霊でもしてるみたいだなとか思ってたら、ポッターの杖からマジもんの幽霊が出てきた。守護霊って、守護なんて文字は付いていても霊だよな。
■バックビーク
「怪我! ドラコが、怪我!」
あの膝をすりむいただけで重病人扱いされるドラコが!
……後から思うに、あの時の俺は軽いパニックに陥っていた。
なんでこんな怪我をした、どうしてハグリッドの言いつけを守らなかった、いろいろ言いたいことはあったけれど、出てくるのはドラコを罵る言葉ばかりだった。
「クラッブ、お前、罵る言葉だけは無駄に語彙があるんだな!?」
「貴方たち! 病室では静かに!!」
マダム・ポンフリーに叱られて、俺たちは声のボリュームを落とした。
「寝てなくていいのか?」
「腕の怪我で、どうしてベッドを使うんだ。病人とは違うんだぞ」
いつぞに膝擦りむいただけでベッドインしてたお前がそれ言っちゃう? ああでも、膝の擦り傷で重病人扱いなんだから、案外もう治っていて腕を包帯で吊っているのかもしれない。
と、ドラコが急にくすくすと笑い出した。…どうしちゃったのお前。
「久しぶりに、名前を呼ばれたと思って」
途端、バツの悪さに、俺はドラコから顔を逸らした。あれは、心の声が漏れたのだ。いつもは、ちゃんと気を付けているのに。
「罵られたのも。そんな口を叩かれるのは久しぶりで、少し懐かしかったんだ」
そう言ってドラコが苦笑するので、俺もちょっぴり懐かしい気持ちになって、感傷に浸ってみたりなんかして。あの頃に戻れるのなら、何度だって時間を巻き戻すのにと思った。
【4巻】
■闇の印
禿げたな、親父。お袋は白髪が生えた。なんというか、日々憔悴していってる。そんな感じ。闇の印が上がってから、ずっとだ。折角の休暇なのに、家はずっとどんよりとした空気で、辛気臭くて仕方がない。早く学校に行きたい。
■復活
『我が君』が、そう、「例のあの人」が復活したと、親父は言った。自分は『死喰い人』として再び活動するのだと、クラッブ家の力を総動員して、「例のあの人」に尽くすのだと。あほかと思った。
「『例のあの人』が悪の魔法使いだってことは、ホグワーツに入学する前のガキだって知ってることだぜ」
「ならば死ね。あのお方に従属しないクラッブ家の者に、居場所はない」
親父のマジ顔に、これは本気だと、殺す覚悟を見て舌打ちする。ちくしょう、ちくしょう。
「命が惜しければ、『彼ら』の前で生意気な態度はとるな」
ちくしょう。
【5巻】
■
誰かに従属することでしか、親父の守りたいものは守れないんだろう。そんなもののために、守ってるんじゃないだろう。家なんて、クソ食らえで、それでも真剣にそれを守ろうとしている親父は、痛ましかった。
■
親父が捕まった。アズカバーン!
やっぱ、どっか抜けてるっていうか、ダメなんだよなあ、親父。ぶち込んで嬉々としてる、英雄気取りのグリフィンドールの坊ちゃんどもを殴り倒してぇ。
【6巻】
■死喰い人のこどもたち
「アダムとイヴが知恵の実を食べたから、彼らは神の怒りを買って、人という種は罪を負った」
「『創世記』か」
「罪人の子は、罪に問われるのかしら」
小さく首を傾げて、彼女は笑った。
「私達、『同じ穴の狢』ね」
「それを言うなら『同じ塒の蛇』だろう」
「ふふ、そうね。私達は『蛇』だわ」
その賢さ故に、神の嘘を知りイヴに告げ、神に呪われた生き物。
「……しかし貴方、よくそんな言葉を詰めておけるだけの脳味噌があったわね」
暇があればそんな悪口紛いの軽口を叩く。そんな蛇流の挨拶が、俺は嫌いではない。
【7巻】
多分なんやかんやあった。ドラコの根っこの部分、本当は気の弱いところや、根が素直なところは変わってなかった。ただ余計なものが増えていただけで。
■ドラコが一人で悩んでいる
早く、早く、この手を掴んで。そんな感じに助けの手はいつでも差し伸べられるようにしていて、待ちに待った「助けて」がきた、そんなシーン。
「助けてくれ、ビンセント」
「お前は、やっと俺の名を呼んだな」
俺は口笛を鳴らし、手にしていた羊皮紙を丸める。それから、いつぞのトンネルよろしく腕を通して、指先だけをチロチロ動かした。
「仲直りの握手は、いかが?」
そうして、俺たちはまた、指先だけの握手をした。
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