先生、バスケがしたいです!
[神様転生/オリ主/男/黒バスほか、ジャンプ作品]


「やあ、神様転生の時間だよ」
「突然始まったな!?」

 白。ただ白一色の空間に俺はいた。神様転生と言うからには、目の前の胡散臭い笑みを浮かべた性別不詳な美人さんは神様なんだろう。二次小説じゃ、よくあるテンプレートってやつだ。つまりこれは小説だ。現実じゃあない。

「本当に、人の死とは突然なものだ。君の死因は……ほー、食中毒。生レバーおいしいよね」
「ほんまそれ。耐えられんかった」
「にゃはは。まあ、特に手違いがどうとか、君の頑張りに報いてどうってこともないんだけれど、物語の都合上、僕は君の願い事を聞いてあげることになっている。いわゆる、特典ってやつだね。さて、何が欲しい?」
「その前に、転生する世界について教えて欲しいんだけども」
「『君がそれを決めるのさ』、僕が言えるのはこれだけだね。あとは着いてからのお楽しみ」
「妙な含みがあるが……選べるってことか?」
「そう、君の選択次第だ」
「それなら、俺は黒バスの世界に行きたい! 特典には、バスケが上手くなれるだけの肉体と才能を頼む。黒バスの世界でバスケがしたい」
「無い物ねだりか。人間らしくていいと思うよ」

 神様が笑う。俺がプロのバスケットプレイヤーに憧れていたことも、プロになれるほどの才能はなかったことも、この神様ならお見通しなのだろう。それでも諦めきれず、練習で無理を重ねた結果、膝を故障して、結局はバスケを諦めざるを得なくなった俺だ。
 まあ、そんなことはどうでもいい。要は膝がぶっ壊れるほど練習に打ち込むくらいには、俺はバスケが好きなのだ。だからこそ、あのスーパープレイの連続、というか既にバスケではなく超次元なバヌケと化した試合をこの目で見たい。そして、自分もそんなプレイをしてみたい。

「まず肉体だけど、『バスケが上手くなれるだけの』ということだったから、どんな動きも無理なくできて、ある程度は無茶が効く、『スポーツ万能な身体』にしておくよ。チートボディってやつだ。大は小を兼ねるってね」
「やったぜ」
「もちろん、練習しなきゃ上手くならないけど、君、バスケの練習なら喜んでやるだろう?」
「まあ、そうだな」

 俺は頷く。神様は続いて困ったような呆れたような顔をした。

「才能に関しては、あげられないというか、必要ないというか」
「どういうことだ?」
「人は誰しも可能性の種子を持っているんだよ。だからね、君がバスケを志し続ければ、開花は必ず訪れる。そしてこれは、僕からあげられるような類のものじゃない」
「要するに、貰わなくても努力でなんとかなるってことか?」
「そうそう、そういうこと。友情、努力、勝利ってね。君がこれまで生きていた世界では、努力が報われないことも、正しさだけではどうにもならない理不尽なこともあったかもしれない。けれども、これからは違う」

 神様は両腕を広げる。白の世界に、眩い光が溢れ出す。あまりの眩しさに、俺は目を瞑る。

「努力は報われる、正義は勝つ。君が行くのはそういう世界で、今の君は可能性の塊だ。君の人生が良きものになることを願っておくよ」

 この神様、最後だけいいこと言ったな、なんて思いながら、俺は意識を闇に呑まれた。






 高校の入学式。桜を背景に、ここから俺の念願の生活が始まるのだと胸を躍らせた。
 中学では、色々と予定を狂わされることがあっただけに、感動はひとしお。これでようやく、バスケだけに集中できるというものだ。
 ――月が七割消し飛んで、世間がちょっと騒めいたり、何故かリング争奪戦に巻き込まれるようなこともあったけど、俺は元気です。

 おのれ神様、こりゃどういうことだ。俺は黒バスの世界に行きたいって言ったのに! いや、ちゃんとキセキの世代は存在してたし、黒バスの世界ではあるんだろうけどさ。キャラ達がちゃんと居るって分かった時にはガッツポーズしちったぜ。
 ただ、他のジャンプ作品も混ざってるみたいなのが予想外。俺の予定が大いに狂ったよ! 特に中学生活!
 いつの間にかボンゴレファミリーにカウントされてたのは、気のせいだと思いたい。野球バカな山本に並んで、俺もバスケ馬鹿扱いされてたけど、おまいらに巻き込まれてなきゃあ、俺はもっとバスケに打ち込めたわ馬鹿ぁ!
 そもそも、並盛中学に入学してしまったのが原因といえば原因だが、元風紀委員だったらしい母親の強い勧めから仕方がなかった。代わりに両親から、高校は希望の学校に行くという条件をもぎ取れたのだからよしとしよう。

 虚にたまに襲われる日々の中、今日この日を、生きていることに感謝しつつ、俺は今日のおは朝のラッキーアイテム「拾ったカード」を、アンナさんに貰った数珠と一緒に巾着に入れる。ってか、なんでデュエルモンスターズのカードが校門の近くに落ちてんだ。

 式の間、早速新入生の中から黒子の姿を捜したのだが、彼の持ち前の影の薄さからか、見つけることは叶わなかった。まあ、バスケ部に入部すれば、否が応でも会うことになるだろう。楽しみだ。




 ――この高校生活で、バスケを目一杯楽しむ。
 入学式の日、そう決めた俺である。
 まあ、そんなわけであるから、ルキア奪還もDIO討伐もお呼びでないのだ。

「俺はなんとしても……ルキアを助けてえ!」

 だからって、なんで霊が見えるだけの普通の人間を連れて行こうとしちゃいますかね?

「ごめん、インターハイが控えてるし」

 暗に諦めてくれというのに、監督に断って連れて行くとか反則では。


「DIOとの戦いは、厳しいものとなるだろう。危険なことに巻き込むことを申し訳なくなる思っている。だが、お前さんの力が必要なんじゃ」
「てめえは俺が連れて行く」

 俺スタンド使えないよ? ねえ? 承太郎?

「ゆるして」
「ダメだね」

 嘘だろ承太郎。
 俺がバスケに取り組もうとすると、立ちはだかってくる問題、事件。それはこの件にとどまらず、その後も続いた。大いなる意志でも働いているんじゃないか。ちくしょう!


「先生、バスケがしたいです!」








・アンナさんに数珠をもらった時の話。

 確かに、可能性の塊だとは言われた。人は誰しも、可能性の種子を持っているんだって。だから、これはその種子が芽生えたということなんだろう。

「だからって、こういう方向で芽吹くことは望んでねえんだよ!」

 努力に結果が伴うということ。それは素晴らしいことだけれど、少し考えものだ。
 パワースポットとして有名な山を登ったら、齢六歳にして幽霊が見えるようになった。努力ってそういう!? 登山は修行カウントか!
 行く先々には、幽霊、幽霊、幽霊! ひええ……。
 俺を心配するように見つめる、血まみれの幼女には、和めばいいのか怖がればいいのかわからない。取り敢えず撫でておいた。にへ、と笑う幼女。かわいい。ここで交通事故に遭ってしまったらしい。お花を添えたら、幼女はバイバイと手を振って空に昇っていった。せつない。

「貴方、素人の癖にやるじゃない」
「ファッ」

 バンダナを頭に巻いた、セミロングのノースリーブ女子がそこには立っていた。中、高校生くらいだろうか。腋が眩しい。

「優しい言葉は、悲しい霊に一番よく効くのよ。でも気を付けなさい。それで逆に気に入られて、取り憑かれてしまうこともある」
「なにそれ怖い」
「ところで、この場所を知らない? 地図が分かりにくいのよ」

 見せてもらった地図の目的地は、ここからそう遠くない高台だった。

「お姉さんは、巫女さんとか?」

 腋が見えてるから。かの弾幕シューティングの腋巫女を連想しつつ尋ねると、彼女は目を細める。

「あら、よく分かったじゃない。私はイタコの恐山アンナ。遠くない未来、シャーマンの王の妻になる女よ」

 はわわ。







・部活見学
新入生は、今日から部活の見学ができるらしい。もちろん、俺の入る部活はバスケ部一択だが、折角なので他の部も見学してみることにした。
出身中学の話をすると、必ずと言っていいほど野球部だった山本の話が出る。さすがは山本だ。俺も基礎体力なら負けていないと思うんだけれどな。華が足りないとは思う。欲しいぜ必殺技。
ちなみに野球部は、入部試験で野球拳? をしていた。なんでさ。
そうして様々な部を見て回った俺は、途中バレー部やアメフト部の勧誘を受けながらもその場で断り、バスケ部に入部の希望届を出したのだった。
……遠目に見えたテニス部のラリーが、明らかにテニスではない何かをしていたのは、見なかったことにしようと思う。テニヌこわい。


・落ちていたノートは、警察に届けておいた。
巷ではキラが犯罪者を心臓麻痺でコロコロし始めたなんて話もあるが、俺の日常に関わってくることはなく、むしろ俺の生活にデスノート要素が入り込む余地はなかった。
なにせ、すでに幾つもの要素で、日常が混沌としているものでして。


・彼について、とあるデュエリストの証言
「知り合ったのは、高校入学式の帰り道。名前君がたまたま僕のデュエルに立ちあうことになって……そう、その時に、このカードも託されたんだ。そのおかげで、今の僕がいる。
カードは拾ったって話だったけど……彼は随分と精霊に好かれているらしい」


・彼について、とあるイタリアンマフィアのボスの証言
「だからオレはボスにはならないって! え? 名前君について? そうだなあ…バスケが好きで、努力家で……。頼もしい、のとは少し違うな。後方支援? 名前君が後ろに居てくれると、なんだか上手くいくような気がするっていうか。う〜ん、うまく言えないなあ

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