#君とデート


「なまえ、明日暇? もちろん暇だよね。明日デートしない?」
「は?」
「だぁから、デート。良いでしょ?」

これからコンビニ行かない? のようなノリで誘いの言葉をかける五条先生に対して不信感といらだちが募る。

「デートって、そんな急に言われても…カップルみたいだし」
「いや、僕たちもう恋人でしょ?
いいじゃない。なまえ、いつも任務頑張ってるしたまのご褒美だと思えば」

恋人、言われればそうだけど……。いつもずるいなぁ
言いながら五条先生は私にスマートフォンを見せる。そこには時期限定スイーツのページ。

「……先生、ここ行きたいんですか?」
「なぁんだバレちゃった?
でもデートは本当だよ。普段全然構ってやれてないからさ、たまには僕にもいいカッコさせてよ」

じゃ! 明日は九時には迎え行くから!

そう言い残し颯爽と去っていく五条先生の後ろ姿を眺める。本当に勝手な人。
……急いでファッションショーを開催しなきゃならい。



1:00 明日着る服を選んでたらこんな時間…

「あー!! もうこんな時間!?」

時計を見るとすでに日付が変わっている時間。その後も任務や事務処理で帰宅が遅くなってしまった。帰りがけにコンビニに寄って緊急レスキューとデカデカと書いてあるパッケージのシートマスクを購入。
いつも以上に入念に入浴を済ませる。ムダ毛の処理やマッサージ、バスソルトでのマッサージ、毛穴の掃除など……
時間がかかるのだからもう少し余裕がある予定にしてほしいなとも思わなくも無いが即行動が五条先生らしいのでなんとも言えないのだけど。そんなところも好き、なんて。
バタバタと入浴を済ませ服も決めて布団へ潜り込む。七時に起きれば完璧だ。


11:00 海沿いをドライブ

「なまえおっはー! 用意できてる?」
「う、はい! おまたせしました」
じゃあ乗ろうか
そう手を引かれて進むと黒塗りのいかつい目の車。ちょっとまってくれ、これってもしかして。
不安は的中した。運転席にはなんと伊地知さんがいた。

「え!? ちょっと伊地知さん? なん、なんで……」
「あぁ、伊地知?
なまえの家向かってたらさ、この空気の読めない男から連絡がきてさ〜〜。今日は僕オフだって言ってるのに上からの指示ですとかなんとか言ってくれちゃって? 僕たちの邪魔しに来てるわけ! 取り敢えずなまえの家まで送って貰おうと思ったんだけど、なかなか帰ってくれないからどうしようかなって思ってるところ」
「五条さん!! 今日は、この任務は本当に五条さんにしかできないんです!! お願いします……!」

運転席で小型犬のように震える伊地知さんを見ると、何も言えなくなってしまった。中間管理職の辛いところだよなぁ……。

「五条先生、任務なんですよね? 伊地知さんが可愛そうなんで行ってあげてください」
「別にあんなの可愛そうでもなんでもねーよ。むしろデートを邪魔された僕たちのほうが可愛そうじゃない? なあ? 伊地知どう思う?」
「ヒィイ……!」
「そんなこと言わないで行ってください、ね? 私待ってますから」
「えー……。あっ! そうだじゃあなまえも来てよ、一緒に。伊地知どーする? それなら僕どこにでも行くよ」
「五条さん!? ていうか今回は場所も場所なんで…! 早く行かないと……!!」
「ちょっと先生!? 何言ってるんですか!?」
「うん、そうだ。そうしよう。なまえ。パンケーキは辞めてこれから海沿いをドライブしよう。伊地知の運転だけど」
「みょうじさぁん……!」

こうなった五条先生はてこでも動かない。それがお互いわかっているから伊地知さんは私に助け舟を求めている。その姿が本当に辛くて見ていられない……。

「わかりました! 行けばいいんでしょう!? 場所ってどこなんですか?」
「みょうじさん……! 場所は遠いです…房総半島の方…」

ホント信じらんない。


17:00 部屋でまったり映画鑑賞

その後、伊地知さんの猛スピードの運転によりなんとか午前中ギリギリには到着し、任務完了そのまま東京へ帰ってこられた。
どこかげっそりしている私と伊地知さんを横目に五条先生はご機嫌だ。楽しかったね、なんて私の肩に腕を回す。
伊地知さんは私の自宅まで車を回してくれ、一緒に五条先生も車を降りた。
先生と伊地知さんは二言三言会話してからゆっくりと車を発信させる。車もどこかおつかれのように見える。

「さ、だいぶ予定変わっちゃったけど、どうする?」
「もう外に出るのは良いです……。映画見ませんか? 一昨日レンタルしてきたんです」
「いーね。それに家にいたほうがなまえとくっついていられるしね」
「そういうのいいです……」
「またまたぁ、ほんと素直じゃないよね」

仲良く手をつないで家に入る。部屋に入りうがい手洗いを済ませ、台所からお茶とお菓子を用意する。お家映画の醍醐味だ。五条先生から促されることもなく私はいつもの場所へ座る。
私の指定席は私の家にあるソファに家主を差し置いてどっかり座り込む五条先生の隣だ。そう決まっている。



19:00 夜の海辺でキス

帰宅してから映画を一本見終わり、良い時間になってきたので晩ごはんの提案をした。
「いいね、もうこんな時間だし外に食べに行かない? …それに、せっかく今日可愛い格好してるのにもったいない」
「! わあい! いきます!!」

めったにない外食のお誘いに私のメーターは跳ね上がる。そして服のことも。気づいてないと思っていたからまさかそんなことを言われるなて思っていたからすごく機嫌が良くなった。

フンフンと鼻歌を歌いながら軽く支度をして一緒に部屋をでる。自然と繋がれる手から伝わる五条先生の体温が心地よい。

「五条先生、今日はお肉がいい!」
「なまえちゃんはいつもでしょ」



少し遠出をして、海が近くにあるレストランに来た。高専は森に囲まれているから新鮮である。
食事を終え、海まで行くことにした。暗くて周りはよく見えないが潮の匂いと波音が聞こえて海まで来たのだなと実感する。

「なまえ、今日いろいろ間が悪くて悪かったね」
「いえ、いいんです。五条先生と一緒にいれたし、戦ってる五条先生久しぶりにみた。……かっこよかったです」
「? なまえ、体調悪い? 素直なのも可愛いけど怖いよ?」

ケラケラ笑いながら海沿いを歩く。私たちがこうやって「一般」の恋人のように歩くなんて久しぶり。
あたりは暗いから私の真っ赤になっている顔が五条先生に見つからなくてちょうどいい。手を握りしめる力を強める。

特に会話することもなくただひたすら海岸を歩いていると、急に五条先生が立ち止まった。
とっさに反応できず、私よりずいぶんと背の高い五条先生の背中へ鼻を直撃した。

「いた!? なに!? どうしました?」
「なまえ、いつもありがとね。本当助かってる」
「やだ…どうしたんですか? らしくない、です」
「僕のこと馬鹿にしてんの?」

ぐに、と頬をつねられる
「いは! いはいれす!! は、はらして!!」
「はは、何言ってんのかわっかんねぇよ」

抓られた頬を撫で私の顔をあげる。

「いつも一緒に居たいって思ってるんだけど、僕ってば人気者で色んなとこに引っ張りだこなの。我慢させてるなって思ってるわけ。本当は手を離してやりたいんだけど、あいにくそんなことできないからいつまでも僕と一緒にいて、僕と死んで。僕より先に死ぬなんて絶対許さない」

絶対に

透過率の低いサングラスの奥であのまんまるい青い綺麗な目が私を射抜く。

「弱気な…さ……さとる、さんなんてらしくないですよ、ほんとに。私がどっか行くとでも思ってるんですか?」
「それは思ってないんだけど。だってなまえ、僕のこと大好きだもんね?」

背伸びをして珍しく自分から五条先生へキスをした。

「ええ、さとるさんのこと大好きです。ほんとに好き。一緒にいたいし、最悪悟さんにもしものことがあったら私が悟さんのこと殺してやる。そう決めてるんです。だから私以外のところ行かないで、一緒にいて。こんなこと今まで思ったことなかったのに、さとるさんのせいだ。最後まで責任とってください」
「……言うじゃん。上等だよ、覚悟しとけ」


どちらからともなくまたキスをした。このまませんせいと一緒に溶けちゃえばいいのに。

せんせい、だいすき。

「じゃ、良い時間だし帰ろっか。今日このまま僕の家泊まりに来て。一緒に寝よう」
「……うん」



その後、更に愛が深まりました

#君とのデート
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