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駆け落ち録
▽2016/11/17(Thu)
愛し恋しや
「ママ」
気難しげに結ばれていた唇は、その言葉を放つためだけに開かれる。谷崎は読書を中断すると、何か思うことがあるような悩ましげな目つきを海月へと向けていた。
海月の瞼は固く閉じている。薬が効いているのだ。軍医の経験を持つ森から処方された睡眠薬は、なるほど効き目がすこぶる良いらしい。
「僕は貴方の母親ではないのですがねぇ」
谷崎は、既に死してこの世に存在するはずのない己の母親のことを思い返していた。海月の、少し固い毛髪を指に絡めながら。
病的
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