先程、腕に印があるのを知ってしまった所為で気持ちが酷く落ち込み、こんな話なんかすぐに終わらせてぐっすり眠ってしまいたい気分だった。
「お可哀想な姫君…ダンブルドアの元に居続ければ貴女は幾度となく裏切られ全てを失っては独りになり、その繊細なお心をボロボロにされてしまう事でしょう…。彼らを庇い側について何が得られますかな?私は未だかつて姫君の死を望んだ事はない。我々は心より姫君をお慕いし、貴女様が必要なのでございます。どうかこのルシウスを信じてはいただけませんか?」
シリウスはレンを守る様にルシウスに吠え、そして今にも飛び掛かり喰い千切りそうな…もしくは変身を解き戦いを挑みそうな空気を感じ、レンは犬を抱きしめる腕に力を込めゆっくりと顔を上げると悲しそうな表情でルシウスを見つめた。
「ルシウス…貴方は勘違いをしているわ。私はダンブルドアに何かを言われてこうしている訳ではないのよ。さっき名前が出たルーピン先生もブラックも、勿論そう。」
「それでは何故、頑なにその様な道をお選びになるのです?失礼ですが姫君、我が君が万が一お亡くなりになった時、世界は貴女をよくて隔離、悪くて殺そうとなさるでしょう。生き残る道は此方にしか残っておられないのですぞ?」
「そんな事、私がこの道を選ぶって決めた時から覚悟を決めてるのよ。…私は…昔は色々大層な事を思って覚悟を決めていたわ。けれど、今はたったひとつ。この子達を守りたいの。」
そういうレンに、ルシウスは我が耳を疑う様な表情をしていた。
たかが動物に命を賭けるなんて理解出来ないと言いたげで、レンはどこか切なげに言葉を続ける。
「こんな私でも私なりに愛せば、この子達は愛情や信頼を返してくれる。私の心の渇きを潤して、色々な感情があるって事を教えてくれる。私はそれが嬉しいの。この子達が腹の底では何を考えてるかなんて、私には判らないわ。…それでも、私には私に見せてくれる“今”の姿を信じて護っていきたいの。例え私の思う通りでなかったとしても、明日裏切られたとしても、私は後悔しないわ。私は死ぬその時まで護りたい者を護って朽ちていきたいの。」
そうはっきりと言うと、黒い犬は吠えるのを止め、気遣わしげにレンを見つめ、レンは犬の頬に自らの頬をすり寄せると抱きついたまま動かなくなってしまう。