「姫君…今一度良くお考えください。我が君ならば、その動物を自分の配下にし殺さない事を条件にお戻りになればお許しくださいます。その様な動物無勢の為に意地をお張りになるのはお辞めください。…このルシウス、貴女様には生きていていただきたいのでございます。」
「有難う、ルシウス。…そうね、死ぬまでには考えておくわ。」
「姫君…次にお会いする時まで、私めの助言をよく御考え下さいませ。…良いお返事をいただけると願っておりますぞ。」
ルシウスはどこか切実そうな表情で言い、レンが顔を上げて小さく頷けば、いつもの冷たい笑みではなくどこか優しく微笑むとその手に付いた血液を愛しそうに見つめ口付けてから一礼すると姿をくらました。
レンは酷く疲れたと言いたげに深く溜息を吐けば、シリウスは人の姿に戻り気遣わしげにレンに声をかけるも、レンはそれに視線を向け「疲れた」とへらりと笑ってみせた。
「シリウスが変身を解いて飛びかかるんじゃないかって気が気じゃなかったわ。…でも有難う。助けに来てくれて助かったわ。」
レンはそう言うと、ゆっくりと立ち上がろうとするも眩暈を起こし、また床に戻ってしまい小さく苦笑してしまう。
シリウスは杖を一振りしては手首の傷を癒し、そこと腕の印を隠す様に包帯を巻きつければ、一言「すまなかった。」と詫び、レンは頭を横に振っては小さく笑いシリウスを見つめる。
「シリウスが言ってた償いの記憶って1歳の誕生日の事だったのね。でも大丈夫よ。私はルシウスに言った通り、目の前にいる貴方達を信じてるし、覚えてないから当時の私にとってもそんな衝撃的な事ではなかったと思うわ。気にしないで?」
「だが…ちゃんと伝えておくべきだった。」
「何言ってるのよ。話してくれようとしていたでしょう?私が聞かない方を選択したの。だから問題ないわ。」
レンは抱っこしてと強請る様にシリウスに両腕を伸ばせばシリウスはレンを強く抱きしめてから抱きかかえてくれた。
「…私少し眠っても良い?…腕の印見てから…ヴォルデモートが耳元で囁き続けてて煩いの。」
「あぁ…皆には疲れて眠ってると伝えておく。安心して休みなさい。」
「有難う、シリウス。」
そう言い優しく微笑んだレンは、直ぐに意識を手放してしまっていた。
ギリギリを保ちながら、それでもなおシリウスを元気付けようと笑っていたレンの優しさに、シリウスは熱いものがこみ上げて来そうだった。