第20話
レンが目を覚ました時は辺りが真っ暗になっていた。
ゆっくりと下へと降りて行くも下の部屋にも誰もいない。
レンは揺り椅子を庭へと持って行くと脚を立てて其処に座り、星をじーっと眺めていた。
背に体重をかけて、そして足に体重をかけて…そうやってゆったーりと揺れながら星を眺め続ける。
明るい火星が視界に入れば、杖腕を膝の上に置きその包帯をとってはそこの印を確認する。
あぁ…夢じゃなかったんだ…。
そう思うのと同時に胃に大きな石が入っている様な気分だった。
印を指でなぞると瞳が熱くなるのを感じる。
これくらいで心を揺り動かされていてはいけない…そう思いながらも、この印を認めたくなくて、完全な状態で腕に存在し続けているのが許せなくて、レンは何度もそこを引っ掻いた。
引っ掻き傷ではなく剃刀で斬り裂いた様な傷がいくつも付き血が溢れるも、その印は今し方傷の上からつけられたかの様に傷ひとつ付きはしなかった。
「そうやって、いつも私を嘲笑い続けるのね。…父親なら抱き締めて優しい言葉のひとつでもかけてくれたって良いじゃない…。」
レンは自嘲的に笑みながらそう呟き零せば、腕をだらんと下ろし、ゆらーりゆらーりと揺られながらゆっくりと瞼を閉じる。
「なーにしてんだよ。自傷趣味でもできたのか?」
冗談っぽく言いながら現れたのは、ジョージだった。
どうやら夕食にも来ず、疲れて眠っていると聞いてはいたが気になって様子を見に来たのだろう…。
「傍に来ない方が良いわ。…今の私は貴方の知る私ではないもの…。」
そう言うと部屋の方に戻る足音と、そして何やら話し声が聞こえ、素直に従ってくれたジョージに感謝するも、少しすればそれは間違っていたと思い知らされる。
不意に腕に触れる感覚がし、「触らないで!」と思わず大きな声を出しては腕を自分の元へと引き寄せ、赤い瞳のままで触れた主を睨んでしまっていた。