「切り刻んでみたけれど、印は傷ひとつつかなかったわ…完璧な姿で此処に在り続けて…そして耳元で囁き続けるの。父の元へ戻って来い。お前の戻るべき場所は此方なのだ、ってね。父の元へなら戻ってるわ。シリウスとリーマス。誰よりも私の事を愛してくれて考えてくれてるパパ達。…そうでしょう?」
掲げられた手をシリウスがしっかりととっては握り、それに驚き身を起こす。
するとリーマスが一度だけ優しく抱きしめてくれ、身を離すと真っ直ぐにレンを見つめては「言い訳になってしまうかもしれないが、話を聞いてもらえるかい?」と聞くリーマスに、レンは頷くと、リーマスはゆっくりと話し始めた。
「すまなかった、レン…まだ事の善悪も判らぬレンに私は杖を向けてしまった。例えそれが演技であろうと、あんな幼子に殺す演技なんかしてはいけなかった、許されるべき事ではなかった。」
「私が愚かだったんだ。お前が誰の子であろうと、私の子だと胸を張って育てていこう、そう覚悟を決めていた。お前が産まれてから1年、そうして来たつもりだ。レンはとても物分かりの良い子供だった。いや、子供らしくない子供だったと言った方が正しいだろう…。人の気持ちにとても敏感で泣くのが仕事な赤ん坊なのにも関わらず、時が経てば経つほどにレンはあまり泣かない子になっていった。」
シリウスは隣に座りそう言うと、空いている手でポンポンっと叩く様に頭を撫で、レンはそっとシリウスを見上げると優しい眼差しをレンに向けていた。
「だが抱き上げてやれば子供らしくはしゃぎ、良く笑う子だったんだ。一生懸命私に何かを伝えようと口をもごもごと動かしていたりな…初めて名を呼ぶのは私かアクアか勝負をしたりもしていた。…アクアもだいぶ調子を取り戻しては、1番に呼ぶのはママだと自信満々だった。」
「私が最初に覚えた言葉はなんだったの?」
レンは思わずシリウスにそう聞けば、シリウスとリーマスは顔を見合わせ、思わず笑う。
「私に手を伸ばしてはっきりとではないが「ムー二」と呼んだ。パパでもママでもなく、私の名前だったという事に驚いたよ。よく遊びに行っていたのもあったが、シリウスもアクアも互いを呼ぶ時は名だったし、パパとママはまだ覚えられていなかったのだろうね。」
それにレンは思わず小さく笑ってしまった。
2人は2人のどちらかだと思って勝負をしていたところで、この結果だ。ポカーンと驚いた様な表情をしていたのではないだろうか…?