パトローナスを使えないレンにとっては、魔法は意味がない…。
ただ、目の見えない吸魂鬼にとって、動物の姿である事が何よりのレンの武器なる。
変身を済ませハリーの方の様子を伺えば、ハリーが「ダドリーの大馬鹿!レンの言葉が聞こえなかったのか!?」と声を上げてるところだった。
音からして、ダドリーに殴られ、地に横たわってしまったのだろう。
突然光を奪われ、このような状況に置かれれば、誰だって取り乱してしまうが…
そんな様子にレンは少しだけ苦笑を浮かべた。
犬になるとまた便利なもので、嗅覚や聴力が優れるような気がした。
吸魂鬼の数は3体…
レンはダドリーに襲いかかろうとしている吸魂鬼に何度かタックルをすると「ガルルルルッ」と唸り声をあげ一体に噛み付き、ブルブルブルっと顔を激しく振っては噛み千切ろうとすると一体は慌てて逃げ、もう一体にもタックルをし近付かせない様に努力をし続けた。
自分が守護霊の魔法を完璧に使えたら…
この時ほどそう強く思った事はない。
ハリーに魔法を使わせる訳にはいかない。
そう思った瞬間だった。
「エクスペクト・パトローナム!」
そうハリーの声が響き渡ったが、何も起こらない。
その事に少しだけ安堵し其方を見れば、ハリーが吸魂鬼に首を絞められている様で、更にレンの血の気は引き、慌てて吸魂鬼に思いっきり噛み付いては引摺る様に、その身を離させる。
噛み付いたまま空を飛ばれ、両手足が宙を浮くと直ぐに口を離すが、どうやらその一体も逃げてくれた様だ。
ハリーの瞳にはうっすらと光が宿ったのを確認後、ハリーは直ぐに再度守護霊の呪文を唱えれば辺りが暖かい光に包まれ、リーマスが教えてくれたジェームズの姿…そう、牡鹿がハリーを守る様にその場に漂い温もりを与えてくれる。
「ダドリー?ダドリー!」
2匹はレンが何とか追い払っては見せたが、もう1匹が諦めずにダドリーに覆い被さり、吸魂鬼のキスを執行しようとしている姿に、ハリーは「やっつけろ!」と大声を上げると、牡鹿はその吸魂鬼すらも追い払い、何とかピンチは追い払う事が出来た。