「ご覧の通りで俺はたった今帰ったばっかしで、部屋をやっとこさ温めて一息ついたところなんだ。」
「貴方の小屋から城まで戻る足跡はありませんよ」
「はて、俺には…どうしてそうなんか…判らんが…そんなにお疑いなら見てみちょくれ。狭い小屋だ見回しゃ判る」
ハグリッドは困った様な表情をしアンブリッジは唸りながらも再度部屋の中を見回った。
クローゼットの中、ベッドの中や下、ハグリッドが料理に使う大鍋…ありとあらゆる場所をチェックし、裏の出口も開けて足跡を確認したが何もなかった。
当たり前だ。今その足跡の主は貴方の目の前にいるのだから。レンは密かにそう思った。
「貴方どうしたの?どうしてそんな大怪我をしたのですか?」
ハグリッドは新しいドラゴンの肉を顔に付けていたのを慌てて離してしまう。
なにしてるんだ…レンは思ってしまった。
「なーに…ほんの事故で」
ハグリッドは歯切れが悪かった。
「どんな事故なの?」
「あー…躓いて転んだ。」
「躓いて転んだ…」
アンブリッジは冷静に繰り返した。
「あぁそうだ。蹴って躓いて…友達の箒に。俺は飛べねえから。なにせ、ほれ、この体だ。俺を乗っけられるような箒はねえだろう。友達がアブラサン馬を飼育しててな。お前さん、見た事があるかどうか知らねえが、ほれ羽のあるおっきな奴だ。俺はちょっくらソイツに乗ってみた。そんで…」
「貴方どこに行っていたの?」
「俺は…健康上の理由で休んだ。…ほれ、ちょいと…新鮮な空気を…」
「そうね、家畜番はなかなか新鮮な空気を吸えないでしょうしね」
アンブリッジの猫なで声がそう言えば、ハグリッドの顔は僅かに赤みを指す。
アンブリッジはその後、ハグリッドに自分は教師を視察し不適切な者を排除する権限を持っている。
また近い内にお会いするでしょうと、言いたい事を言えば小屋を出て行った。
レンはそろーっとマントの下から出てハグリッドの隣に立ち、外の気配を感じ取る。
あの嫌な女の匂いが小屋に充満していて気分が悪かったが着実に雪を踏む音が遠退いて行っている。
レンはほっとして変身を解いた。