「お疑いでしたら、ファッジ大臣の直筆の書類をお持ち致しますが?」
「結構よ。それではお家に帰ったりはしていないのね?」
「勿論です。逆にお聞きしますが、誰もいない家に内緒で帰ってなんの得があるというのです?」
「そう。」
アンブリッジはレンの問いには答えず、何かを考えている様子だった。
「それでは深夜、暖炉に向かって何か話してはいなかったかしら」
「いましたよ。呪文学の練習を1人でやっておりました。寝室でやって友を起こしたくはありませんでしたし、暖炉の前の肘掛け椅子がお気に入りなもので。私が暖炉の火で魔法の練習をしているのはグリフィンドール寮生ならば殆どの者が知っているでしょう。…私の独り言を誰かと話していると勘違いなさったのですか?あの夜。」
レンは挑戦的な瞳をアンブリッジに向けていた。
「アンブリッジ先生、先程から随分と酷い質問をなさるのですね。…まるで私が寂しさのあまり幻影の家族と常に話している様な…申し訳ありませんが、ホグワーツに来るまでほぼ軟禁生活でしたので、話せる友は此処にしかおりませんし、家族もおりませんわ。先生はそんな私が誰と何を話していたと仰るのです?」
アンブリッジはその言葉にまたもや「そう。」とだけ答えれば何かを考える仕草をとる。
「貴女のホグズミード行きを許可するこのサインね、これはあの半獣のものじゃなくて?どういう関係なのかしら。」
『半獣』その言葉に何人かの生徒が立ち上がりレンも吠えようとしてしまったが、ハーマイオニーが手を引き止める。
「…私の名付け親です。親も保護者も居なかったので…保護者の様な存在は私には彼しか知りません。」
「そう。そういえば貴女のお母様は愚かにも大量殺人鬼と婚約した末に自ら命を投げ捨て、そして半獣が名付け親…随分と酷いお話ね。あまりそう思いたくも話したくもないでしょう?愚かな母親にあんな醜い恐ろしい半獣なんて。」
「彼等をそんな穢らわしい言葉で愚弄する事は、私に対してもそうなさっていると受け取っても構いませんね?それが魔法省のお考えだと…。」
「えぇ、その通り。構いませんよ。その反抗的な半獣に感化されている証拠の瞳、それがずっと気に入らなかったわ。貴女に罰則を与えましょう。」
「どうぞご自由に。私は校則違反も恥じるような事も何一つしていませんわ。」
レンは何も悪い事してないじゃないか!とハリーは思わず声をあげ、双子も立ち上がり今にもアンブリッジに飛びかかろうと敵意をむき出しにしていた。
「元々クレスメントとは人をその血で魅了し崇めさせる力があるというわ。貴女もきっとそうしているのね。その所為で彼らに悪影響を及ぼしている。…そうね、貴女スリザリン寮生になる事を命じます。そうすれば彼らも貴女も頭が冷えて元通りになるでしょう」
「そんな罰則が通るのですか?」
「通るのですよ、ミス・クレスメント。」
「そうですか…再度確認させていただきますが、それは魔法省のお考えなのですね?」
「えぇ、わたくしの言葉は魔法省大臣のお言葉だと思って良いのよ。」
「へぇ…判りました。荷物を纏めてきます。ですが…言葉が汚くなりますが一言言わせて頂いても?」
「えぇ、構わないわよ。」
「バッカじゃないの?」
思わず鼻で笑いながら出てしまった言葉に、アンブリッジだけではなくグリフィンドール寮生までキョトンとした後、誰かから「ぷっ」と笑い声が漏れた。
「吸血鬼じゃあるまいし、私の血に惑わされる人なんているならこっちが拝見したいぐらいだわ。古に惑わされて真実が見えていない曇った目の証拠。私はアンタみたいな女に何をされたって痛くも痒くもない。アンタはいつか必ず、この事を後悔する時が来るわ。私には"視える"もの。…可哀想な人ね、ご愁傷様。」
確信めいた様にレンがそう言う言葉に、アンブリッジは顔色を変えたが、レンは気にもせずにその場を後にした。