第53話
レンは瞳を閉じ集中すれば確かに聞こえる。馬の蹄の様な動物の近付いてくる音が。
ゆっくりと瞳を開けば、曲がりくねった二本のイチイの木の間の暗がりにそれは居た。
ドラコは怖いのだろう、レンの側にくればその手をぎゅっと握りレンは其方を見遣る。
「大丈夫よ、あの子は大人しいから。」
「あれが大人しいだって?」
ゴイルの後ろで筋張ったスリザリン生が不安げに苦々しくそれを見つめる。
それは、死んだ牛の肉を食っていた。
ハグリッドは自慢げにもう一頭きたぞ!と言うが、殆どの生徒がそれを見えてはおらず首を傾げている。
「さて、これが見えるもんは?」
レンとハリー、そしてネビルと先程のスリザリン生が手をあげる。
「お伺い致しますが、一体何が見えるんでしょうね。」
ドラコが嘲るように言えば、ハグリッドは地面の牛の死骸を指差した。
するとその肉がひとりでに身から剥がれ宙に浮き消えていく…彼らにはそう見えている様で悲鳴が上がった。
「さて、判るもんはいるか?」
ハグリッドのそう言う言葉に手を挙げたのはレンだけで、ハグリッドは自慢げにレンを指した。
「セストラルです。見た者にありとあらゆる恐ろしい災難が降りかかるという迷信がある生き物ですが、実はとても賢く、彼らは既にホグワーツの馬車引きとして働いてもいます。なぜそんな迷信がついたかというと、見える者と見えぬ者が居る事とその見た目からだと言われています。」
「良う出来た!レン、お前に5点やろう!セストラルを見る事が出来るのはどういう者か判る奴はいるか?」
レンも手を上げるが、ハーマイオニーが手を挙げハグリッドはハーマイオニーを指す。
「死を見た事がある者だけです。」
「その通りだ!グリフィンドールに5点。さーてセストラルは…」
「ェヘンェヘン」
アンブリッジがそう咳をするとハグリッドは心配そうに一番近くのセストラルを見遣り、レンは思わず笑ってしまう。
やっぱりハグリッドは暖かくて心が休まる人だ。