「ハグリッド先生、その子じゃないわ。」
レンがそうツッコミを入れるとアンブリッジだと目配せすれば「おう、やぁ!」と、今気付いた様に声をかけにっこりと笑った。
「今朝貴方の小屋に送ったメモは受け取りましたか?」
アンブリッジは前と同じ様に大きな声で出来るだけゆっくり話しかけた。
まるで外国人に、しかもトロイ人間に話しかけている様だ。
「貴方の授業を査察しますと書きましたが?」
「ああ、うん。この場所が判って良かった!ほーれ見ての通り…はて、どうかな…見えるか?今日はセストラルをやっちょる。」
「え?何?なんて言いましたか?」
アンブリッジは耳に手を当て大きな声で聞き返すと、ハグリッドはちょっと戸惑った様子を見せる。
「あー、セ・ス・ト・ラ・ル!大っきな…あー…翼のある馬だ。ほれ!」
ハグリッドも出来るだけ大きな声で教え、手をバタバタ上下させ、同じく外国人を相手にジェスチャーを交えて説明している様子だ。
アンブリッジはそれが気に入らなかったのだろう「原始的な身振りによる言葉に頼らなければならない」大きな呟き声を漏らしながらクリップボードに書き込んでいく。
「さて…兎に角…む…俺は何を言いかけてた?」
ハグリッドは生徒に向き直り話を続けようとするが、変な遮り方をされた所為で首を傾げるハグリッドに、アンブリッジは「記憶力が弱く、前後の事も覚えていないらしい」とブツブツ大きな声で漏らし書き続ける。
その後もアンブリッジはハグリッドの言う事なす事が気に入らない様にいちいち何かをすれば、それがレンの心を騒がしくしていく。
…この女は罰則を与えるのを楽しんでいるのだ…この程度で騒いで彼奴の思い通りにさせてなるものか…このまま心を凍らせるのだ。昔のように…。
そう瞳を閉じて自分に言い聞かせる。煽られてもアンブリッジの思うつぼだと思えば思うほど心は冷たくなっていくような感じがし、ゆっくりと深呼吸を何度かしてから、レンは瞳をゆっくり開けば、レンは昔に戻った様に冷たい瞳で口元に微笑を浮かべた。