第54話
レンは本を片方にウトウトとしている時だった。
突然全身に氷水をかけられた様な寒気にも似た嫌な予感が全身を支配する。
その瞬間直ぐにその理由が判り、レンは談話室を飛び出すとスネイプの部屋を力任せに何度も叩いた。
不機嫌そうに出てきたスネイプは、レンの顔色に驚き声を発するよりも先に「ダンブルドア先生の所に連れて行ってください。」と叫ぶと、スネイプは片手でレンの口を塞ぎ、付いてきなさい。と足早に廊下を走っていき、レンもそれを追いかけるが、直ぐに「ダメ…!」と、漏らしては足を止めてしまう。
「クレスメントの力よ、どれだけ私の力を使ったって、その後どうなったって構わない…彼を死なせないで…!」
強い魔力の揺らぎに両手を合わせ祈り、瞳を閉じて集中すれば蛇が男に噛み付く姿が見える。
「何があった?」
「ナギニにアーサーおじ様が襲われている。」
その一言にスネイプはレンを台の上に乗せそのまま校長室へと急いで行く。
レンはそれに感謝しながらも意識を集中させた。
一度噛み付き、苦痛の声を放つアーサー。
だが、反撃しようにも杖を持った腕に2度目の噛み付きが襲う。
その瞬間だった。
アーサーを光の玉が包み、腕を噛み千切ろうとしているナギニの口を無理矢理こじ開けていく。
顎の力と結界の力が相反してバチバチッとまるで電気の音のような音を放つと共にナギニが離れていく。
恐怖と驚きが入り混じった顔をしているアーサーの表情が、再度勢い良く襲いかかったナギニを弾いた結界の光によって照らし出された。
その時、光の結界には花の様な紋章が浮かび上がったのと同時に金の粉が降り注いで身を癒そうとしているのを見遣れば、アーサーの瞳が大きくなっては、その瞳の奥はどこかホッとしたような優しい色をしていた。
『この紋章は…そうか、キミが…私を守ってくれているんだね…暖かい光だ…。』
そう苦痛に歪んだ表情に優しさを浮かび上がらせるも、その出血量からその場に倒れ、アーサーの瞼がゆっくりと閉じられてしまう。
『おじ様!眠ってはダメ…意識をしっかりと保ってください!必ず、必ず助けるから!』
レンは伝わるかどうか判らないがそう祈れば、光の結界からは金色の粉が降り注ぎ、アーサーは意識を失う間際に僅かに口元を緩めた様な気がしたが、直ぐに強烈な吐き気にレンは集中力が途切れ、魔法を最小限に止めれば瞳を開きゴホゴホと咳き込むと大量の吐血をしてしまい、台から崩れ落ちそうになったレンをスネイプが支えるのと同時に、目の前の扉から姿を現したのは寝間着姿のダンブルドアだった。