暫くするとフォークスがモリーの手紙を持ってきてジョージはそれを声に出して読む。
「『お父様はまだ生きています。母さんは聖マンゴ病院にいます。じっとしているのですよ。出来るだけ早く知らせを送ります。』…まだ生きてる…でもそれって…。」
それから黙ったままの時が過ぎていく。
シリウスがバタービールを用意するも、皆少ししか手につけない様だ。
時折皆がヒソヒソ話す声とレンが咳き込む音しか聞こえない数時間だった。
5時になるかならないかの頃、やっとレンは術を解きふぅ…と息を吐いた。
「安心して。おじ様は大丈夫。危険を脱出したし命に別状は無い、もう心配は要らないわ。もう直ぐおば様がこっちに来ると思う。」
「レン…有難う…」
「言ったでしょう?死なせないって。」
レンは自分の手でスカートに広がる血のシミを消し去りながら言うと、ジョージの言葉に口元だけで笑んで答えた。
「朝ご飯を作らないといけないわね。ギルに手伝ってもらわなきゃ…呼んでくるわ。」
レンは立ち上がると目の前が真っ白になる様な酷い目眩に襲われテーブルに手をついたが、心配する面々に「ちょっと疲れたみたい。」と苦笑し、なんでもないフリをするしかなかった。
ただ感覚だけで歩いてシリウスの元に行くと、椅子に座っていたシリウスは顔色が悪いとレンを心配してくれたが、レンはそれに微笑んでみせ、シリウスが褒めてくれる時、慰めてくれる時にしてくれた様にシリウスの頭を撫でる。
大人の男性にこんな事をしても喜ばれないかもしれないが、そうする事で少しでもシリウスの心が軽くなれば…と、思ってしまったのだ。
シリウスは驚いた様に目を丸くしたが、そんなレンの想いが伝わったのか「有難う。」と小さく微笑む。
「クリーチャーがいないからギルをつかってあげてね。」
レンはそう言うと、厨房を出ては扉を閉め、階段を登っては家に帰ろうとするも、タイミング悪くモリーの姿現しに出会ってしまう。
「レン!」
モリーはレンの姿を見るや否やレンを強く抱きしめ、レンは吐き気を必死に堪える。今吐いてしまったら全てが台無しだ。
「貴女のお陰でアーサーは助かったわ。有難う、本当に…」
そう言うモリーにレンは口元だけで笑んで見せる。
「おば様、言ったでしょう?私は死なせたりしない様に全力を尽くすって。」
「えぇ、そうね…そうね。」
「中で子供達が待っています。安心させてあげて下さい。」
そう言うと、モリーは貴女も。とモリーはレンの手を引っ張って連れて行ってしまう。