「その万が一の可能性があるだけでも…っ」
バンッと大きな音を立てて扉が開けばゾロゾロと死喰い人が中へ入って来てはひとつの光線が砂時計に当たりそれが砕ける。
レンはその衝撃に懐中時計を落としてしまい慌てて拾うが、零れた筈の砂時計の砂が其処には見当たらなかった。
レンは通信を切ったかどうかは定かではなかったが、そのままその死喰い人を真っ直ぐに見つめながら懐中時計をしまい杖を構える。
「本当に…お転婆な姫君だ…。」
「其処を退きなさい、ルシウス。」
杖を向けたまま、ルシウスを睨むレンに、ルシウスは冷たく微笑む。
「あのお方の血がその御身に流れていても、その命令は聞けませぬな。」
「アンタ、コイツに育てられてたんだよね?」
ベラトリックスがそう言うとレンは「お世話になった事はある」と小さく答えれば、彼女は高笑いをする。
「じゃ、愛しい我が君の娘が反抗期なのもアンタの所為だ。それもそうだろうねぇ…アンタはこの娘から多くの者を奪ったんだから…アハハハハハッ」
「どういう事なの?」
余計な事を言うなと睨むルシウスに、ベラトリックスは気にもしない。
「あれ?アンタ知らないの?お前の母親を殺したのも、魔法省に入れ知恵をしてアンタの可愛い屋敷しもべを残りの家族を奪ったのは全部コイツの差し金さ」
熱くなったら、心を乱されてはこちらの負けだと…そう思いながら気持ちを落ち着かせているつもりではいたが、ベラトリックスの言葉に瞳は血の様な赤い色に…蛇の様に鋭いものへと変わっていく。
「そう、それがあの方とアンタの絆!なのにお前はあの方を裏切った…!」
そう言うベラトリックスを一喝し、レンは真直ぐにルシウスを見つめる。
「本当なの?」
レンの言葉にルシウスは観念した様に大きな溜息を吐いた。
「えぇ、真実でございます、姫君。ですが…このルシウス、貴女様があんなにも虐待されているのを知り、我慢出来なかったのでございます。」
今まで叔父はルシウスの前でレンを叩く事はしなかった。
だが、あの事件の前。
確かに叔父はレンを殴っていた…それが原因だというのだろうか?