「母を殺したのは…貴方なの?」
「我が君の愛しい子を産みながら、それを受け入れる事をしない。存在を認める事をしない…このルシウスはそれが辛抱なりませんでした。そして言ったのです。我が子として受け入れるか、せめて私に譲渡して欲しいと。そうしてさえくれれば、貴女の訴えに私も協力をすると…そう申し出たのでございます。」
ルシウスは、まるでヴォルデモートに話し許しを請うかの様に言うと、優しくレンの手をとるがレンはそれを直ぐに払い退ける。
「嘘よ…母の最期の日記には、自分の命をもってシリウスの無罪を証明して見せるって、クレスメントの命を賭けられる程の訴えならば、それを信じ協力する…そう言われたような事が書いてあったわ。」
「嘘ではございません、姫君…もし私の願いが聞き入れられず、シリウス・ブラックの無実を証明したければ、その命の重さを上手く使うのだと、アドバイスさせて頂いたのでございます。そして次の日…彼女は魔法省大臣の所へ行った。その後の事は私は知る由もなく…」
レンの心はとても複雑なものになっていた。
物心つく前からルシウスはヴォルデモートの子としてではあるが、ドラコと共にいつも気にかけてくれていた。
今の屋敷から出る事は殆どなかったが、頻繁に訪れては色々な事を教えてくれていた。
シャルもそうだったが、レンにとってルシウスもまた親にも似たようなものだった。
そのルシウスが…自分の母親を死に追いやり、そしてシャル、伯父夫婦までも手にかけたのだという…。
色々な感情がレンの胸の中で渦巻き、どうしたら良いかすら判らなくなりそうだった。
「母の遺体は…何処にあるの?」
「どうです、姫君?我々と共に来ていただければ、直ぐにでもあのお方の綺麗なお身体を探し出して差し上げましょう…さぁ、姫君…此方へ…。貴女の選ぶべき道は此方なのです。」
ルシウスは小さく笑んでみせると、そっと手を差し出す。
シャルの最後の願い…母親の遺体を連れ帰る事。
それを叶える為にはルシウスと共に向こう側に行くしかない。
レンはその手段しかないように思えた。
だが、ハリー達の信頼も裏切りたくない…が、自分の腕には既に裏切ったとみなされるマークが刻み込まれている…。
レンは少しだけルシウスの手を取ろうと手を伸ばしかけたまま、体を動かす事が出来ない。