そんな姿を見て、ルシウスはいつもの様にレンに微笑む。
「さぁ姫君…今からでも遅くはありません。我々と共に行きましょう?今がその時なのです。…さもなければ…」
ルシウスは笑みを消し、冷たい表情にすれば、真っ直ぐにリーマスへ杖を向ける。
ルシウスはその先の言葉を紡ごうとはしないが、レンはその言葉の続きが判ってしまった。
さもなければ、次はこの者に生贄になってもらうしかありませんな…と。
ヴォルデモートは言っていた。
レンが信じ愛する者をすべて失った時が自分の元へと来る時。それを楽しみに待っていると…。
もしこのまま拒み続ければ、今度はリーマスが逝ってしまうのだろうか…?
「私…」
「レン、私との約束は覚えているね?」
リーマスは杖をルシウスに向け、鋭く睨みつけながらも、レンに優しく声をかける。
リーマスとの約束…
そう、それは二人で沢山の時を生きる事。
リーマスは今までレンとの約束を破ろうとも破った事も無かった。
それを敢えて今言うと言う事は、自分は大丈夫だと、信じて欲しいと言っているのかもしれない。
またルシウスの言葉に惑わされて狼狽えてはいけないのだ。
「ルシウス…私…」
片手をポケットの中に突っ込みギュッと力強く握れば、リーマスが止める手を振り払い、レンはゆっくりとルシウスの方へと歩いていく。
「さぁ、姫君。」
レンが邪魔をしリーマスに呪文を放てないルシウスは、杖を構えたままではあるが、片手をレンへと差し出す。
レンはその手を掴める位置まで歩み寄れば、にっこりと微笑んで見せた。
「ルシウス…私、父を裏切ることはできないわ。」
「そうでしょうとも。貴女の帰るべき場所は此方側なのですから。」
やっと判っていただけましたかと言うルシウスに、レンは無言呪文でルシウスの杖を奪い取り、その表情を冷たい笑みに変えて見せる。