第86話
次第に光がおさまってくると其処は見覚えのある風景だった。
そう、ホグワーツの中庭だ。先程、自分は玄関に居たはずだ…。
驚き顔でその場に座り込んだまま辺りを見渡すとハリーによく似たくしゃくしゃと癖毛の男性と、真っ直ぐな黒髪を優雅に揺らせている男性、病気のように青白い顔をしていたが皆と楽しそうに話す男性、そしてずんぐりむっくりな男性の4人がゆっくりと此方に向かって歩いてきていた。
レンはふらっと立ち上がると、その黒髪の男性に向かって歩き始めればその腕の中に飛び込みギュッと強く抱きしめるとその4人は驚き止まっていた。
「良かった…逢いたかった…っ!」
レンの瞳からポロポロと涙が溢れ、抱き着かれた男は自分の胸でいきなり泣き始めたレンに驚き止まっている。
「パッドフット、お前今度は何をしたんだ?」
「プロングズ、誤解だ。俺は何も…お前は誰だ?」
シリウスの声と同じ声の持ち主がレンにそう困惑気味に声をかければレンはゆっくりと顔を上げ、涙で濡れた顔をシリウスに向けその顔をマジマジと見ては違和感に気付いた。
そう、シリウスはシリウスでも自分の知っているシリウスよりも若く自分と同い年くらいに見え、その身はグリフィンドールの制服を纏っている。
「あー…えっと、その…あれ?」
レンと瞳を合わせれば仄かにシリウスは眉を顰めていたが頬は赤く染まり、他の3人もレンを見て小さく声を漏らした。
「えっと…その…」
「とりあえず、涙拭けって。俺が泣かしたみたいだろ。」
シリウスは自分の袖でレンの涙を拭ってくれる。レンは思わず「有難う。」と小さく笑んで見せた。
「シリウス、本当に何も心当たりがないのかい?アクアへの悪戯に巻き込んだとか…この子怪我してるみたいだし。」
「ムーニー、あれは…ってか、あの女は今関係ないだろ!」
シリウスの顔が赤く染まり怒った様に声をあげるが、ムーニー…そう若い頃のリーマスは楽しそうに笑うだけだった。
「貴方達。そんな所で何をしているのかしら。」
その声にビクッと身を震わせたのはシリウスだった。
「これは…その…」
「あら、ミスター・ブラック。貴方、女の子を泣かせたのね?」
綺麗にウェーブがかかった髪を纏め、結い損ねた髪をなびかせながら凛と近付いてくる女性にレンは目を奪われてしまった。