「名前は聞いても許されるのかしら?」
「…えっと…レン、です。」
「由来はロータスね?ふふ。良い名前だわ。どうして此処に?生徒でもない貴女が忍び込むなんて危険な真似をしたの?」
「判らないんです…」
「そう…貴女は随分辛い思いをして育ったのね。」
「え?」
「背中の傷。拷問道具でつけられた傷でしょう?私の家もね、父と母がよくそういうのを使っていたから判るの…ねぇ、話せる部分だけで良いから、なんでそんなに傷だらけなのか、どうしてそんな憂いの顔をしているのか、教えてくれない?」
私は口が硬いから誰にも言わないわ。そう言ってにっこり笑ってくれるアクア。
それに渋っていれば、侵入者だとダンブルドアに突き出すわよ。と軽く脅されれ、水晶玉が見せてくれたのに、自分が罠にはまった所為で父が魔法に撃たれかえってこなくなってしまったと、レンは涙を流しながらゆっくりと話した。
私が、敵の言う事に素直に従っていたら死ななかったかもしれないのに…。
レンの悲痛の叫びにアクアはレンをきつく抱きしめその胸に顔を埋めさせた。
今まで求めても手に入らなかった母の温もりが自分を包んでいる。それがポッカリと空いた穴を少し埋めてくれる様だった。
「レン、いいこと?その耳をよくかっぽじいて聞きなさい。確かにきっかけはレンだったかもしれない。それとも別にあるかもしれない。そんなのはね、どうでも良いのよ。亡くなった人がその道を選んだのだから。死にたかったとは言ってないわ。…その戦士はね、聡く時に愚かで勇敢な戦士なのよ。絶対に自分が選んだ道を悔いていないわ。その証拠にその戦士はゴーストになって現れていないでしょう?」
レンは小さく頷いた。
「ただ唯一後悔しているとしたら、愛しい愛娘の前で撃たれてしまった事でしょうね。貴女はとても自分に厳しく優しい子の様だから。お父様もそれを理解なさっていたでしょうし、貴女も死なせまいと必死にもがいたんじゃなくて?」
「でも…でも、死なせてしまった…いくら呼んでも笑って応えてくれないの…冗談だって…。…姿を見せてくれない…!」
「レン、ゴーストになる事はとても愚かで辛い事なのよ。」
「どうして?」
「ゴーストになれるのは魔法族のみでね、自分が生きた痕跡を辿る様に現世に戻って来てしまうの。死を恐れ死から逃れて来たのよ。私の知る戦士にそんな意気地なしはピーターくらいかしらね。現世に存在しているのに、こうして愛しい娘を抱きしめる事も出来ない。危ない所へ飛び込もうとするのを掴み止める体もない…とても辛い事よ。」
レンはそれに黙ってしまった。