第87話
レンの意識が戻った時は暗闇だった。
それが自分が目を閉じているからだと気付いた時には、あぁ幸せな夢を見てたんだな…と思ってしまう。
現実に帰ってきたくはなかった…。
レンがゆっくりと瞳を開けば、其処はさっきまで居た玄関ホールの石段だった。
「目、覚めた?」
急に声をかけられ驚き視線を其方に向ければハリーだった。
ハリーがずっと寄り添ってくれレンの手を握っていてくれた様だった。
「心配してくれたの?…ありがとう。」
「ううん。僕がこうしてたかっただけなんだ。」
ちょっとだけごめん。とハリーはそのままレンに寄りかかる様にし、レンの頭に自分の頭を寄せる。
「ごめんね、レン。」
「なにが?」
「僕の所為で…シリウスを死なせてしまった。」
「何言ってるのよ。貴方の所為では無いわ。私がもっと上手く動けてたら…。私占い学の試験の時泣いて飛び出してしまったの覚えてる?」
「うん。」
「あの時…今日のシリウスが倒れるところの光景をみたの。水晶玉が教えてくれてたのに…私何も出来なかった。もう誰も死なせたく無いって頑張ってきたのに…また死なせてしまった…ダメね、何も学んで無い。」
「そんな事ない!レンが居てくれたから…僕は皆を死なせずに済んだんだ。」
「私がいてもいなくても、それは変わらないわ。」
ハリーが繋いだ手をぎゅっと強く握ってくれる。
「そんな事ないよ。…ねぇ、レン。キミは…キミだけはあんな風に僕の前から消えて居なくなったりしないでくれる?」
「勿論よ。私は貴方を護り続けたいもの。その私の背中はハリー、貴方が護ってくれるのでしょう?」
レンが手を握り返しながら、空を見つめて言うとハリーは「勿論だよ。」と答えてくれる。
「なら、私達は死なないわ。もし死ぬ時があったとしたら、その時は一緒ね。」
そう言うレンにハリーはフッと小さく笑ってくれた気がした。