第88話
いつもの場所に座れば、あぁ一昨年ここでうとうとしてたら寮に侵入してきたシリウスに会ったっけ。…窓の外を見れば、あぁあの競技場、シリウスはハリーの飛ぶ姿を見に行ったんだったなぁ。…と、シリウスとの思い出が次々に浮かび、レンは思わず膝を抱えそこに顔を埋めた。
「大丈夫?」
夜になればハリーがそう言いながらレンの側に座りそっと身を寄せてくれる。
「心に穴がぽっかりと空いていて"大丈夫"には程遠いかもしれないけれど…大丈夫にならないとね。ヴォルデモートもベラトリックスも生きているのだから。しっかり意志を継いで戦わなきゃ。…そう頭では解っているのだけれど…」
「心がついてこない、だろ?僕も同じ。…でもどんな状態でも側にレンが居てくれるだけで重たいものが軽くなって落ち着く感じがするんだ。変だろ?」
「ふふ。嬉しいけれどね。こんな私でも…ハリーの役に立ててるんだなーって。」
「役に立つ立たないって言うより、レンは信頼できる大切な人だよ。いつも心の中にはレンがいる。理由も考えた事がないくらい自然にさ。…キミくらいだよ、僕の事いつも気にかけて理解してくれて、僕の事で怒ったり泣いたり喜んだりしてくれるの。」
「そんな事ないわ。褒めすぎよ。」
「そうかな?」
「えぇ。…でも、嬉しいからそのままで居てくれる?」
「うん。変わるつもりも変えるつもりもないさ。」
ハリーは小さく笑った。
それからハリーはレンと一緒にいた。
玄関の前に一緒に座っていたり、湖に行けば其処で遊ぶ生徒を眺めていたり、談話室でチェスの勝負をしてみたり。
外から戻ってくる時、レンはドラコと鉢合わせるまですっかりと忘れていた。
そう、ルシウスの言った言葉だ。
ハリーと繋いだ手が小さく震え、ハリーはちらりとレンを見るとそのまま何も言わずにレンの手を引いた。
「ドラコ。…どんな話を聞かされても…私やっぱり貴方との思い出を無くす事は出来ない。幼馴染だって事は変わらない…出来ればお父様と同じ道を進まないで欲しい。」
レンはそう言うと、ハリーの手の引く方へと歩いて行き、ドラコは不思議そうにしていた。