「笑いが必要な時は我らがナイトをいつでも呼びつけてください、我らが姫君。」
「姫君の為とあらば、例え火の中水の中、夜中だろうが早朝だろうが馳せ参じましょう。」
2人は懐かしいおふざけをすれば、それぞれが両手に口付け、レンは思わずフッと小さく笑ってしまう。
「懐かしいわね。なんだか遠い昔の事みたい。」
「おいおい、俺達の事をそんな昔の人物にされたら困っちまうぜ?」
「そうさ。俺らはまだレンにしたい事が山ほどあるんだからな。」
「気持ち的な問題よ。大丈夫。」
レンは話を終えて戻ってきたリーマスと手を繋げば、それぞれに挨拶を交わしてその場から姿を消した。


家に戻ればレンの心の穴が大きくなっていく感覚がする。
いつも帰ってくれば其処にシリウスの姿があって「お帰り」と声をかけてくれた。
それがもう無いのだ…やっぱりあれは現実に起こった事…そう受け止めるしかなかった。

レンは夜更けに庭に出れば、リーマスは心配そうにレンを見ている。
レンはそれを気にする事も無く地面に座れば、どこかからシリウスの声が聞こえた。
"心を幸福な記憶で満たすんだ"
パトローナスを教わっていた時のシリウスの言葉。
レンは心をシリウスとの思い出で満たし「エクスペクト・パトローナス」とつぶやいた。
すると杖先から光が溢れ、それは1つの形になり此方をジッと見つめている。
レンはそれに瞳を丸くしてポロポロと大粒の涙をこぼした。
「シリウス…シリウス…っ」
抱きしめられる訳がないその守護霊をレンは両手で包みこもうと手を伸ばせば、それはすぅっと消えていく。
「いつでもシリウスは側に居てレンを守ってくれる…」
背後から優しく抱きしめてそう声をかけてくれるリーマスに、レンはただ泣き崩れるしか出来なかった。
「シリウスに…見せたかった…。見たいって、言ってたのにっ」
「見ていてくれたさ。アクアと勝負でもしてたんじゃないかな。レンの守護霊はどっちになるかって。私が勝ったってシリウスは大喜びさ。」
レンはリーマスの時間が許すまで、リーマスの腕の中で泣き続けた。