「さあ、食べよう。」
ビルが慌てて言った。
「モリー、美味しそうだよ。」
モリーの為に皿にシチューをよそい、テーブル越しに差し出しながらリーマスが言った。
これくらい食べられるかい?とよそった量をリーマスは見せながらレンに問い、レンは首を横に振ると、それくらいは食べなきゃダメだとシリウスに叱られる。
暫くの間、食事をする物音がするだけで、誰も話をしなかった。
「ずっと話そうと思ってたんだけどね、シリウス。客間の文机に何か閉じ込められてるの。しょっちゅうガタガタ揺れているわ。勿論単なるマネ妖怪かもしれないけど、出してやる前に、アラスターに頼んで見て貰わないといけないと思うの。」
「お好きなように。」
モリーの言葉にシリウスはどうでもいいという様な口調だった。
「客間のカーテンは噛みつき妖精のドクシーがいっぱいだし。」
モリーは喋り続けた。
「明日、皆で退治したいと思ってるんだけど。」
「楽しみだね。」
シリウスはそう答えたが、レンにはその声に皮肉な響きを聞き取り、心配そうにシリウスを見れば、シリウスは苦笑して見せた。
ハリーの向かい側の席では、トンクスが食べ物を頬張る度に鼻の形を変えて楽しませていたし、アーサーとビル、リーマスは小鬼について話し込んでいた。
小鬼は前回ヴォルデモートに痛手を負った所為か、復活した事を信じているかどうか判らない程に非協力的なのだそうだ。
その話も、直ぐに大爆笑が起こってかき消され、レンはそっちを見れば、マンダンガスの商売の話で、マンダンガスやフレッドとジョージ、ロンが椅子の上で笑い転げている。
「どうした?」
レンはシチューを少し頂いてそれ以上食べようとせず、ボーっと周りを眺めているだけだったのが、シリウスは気になった様だった。
『お前は俺様の傍でしか生きられない。その身に流れる俺様の血が、だんだんとお前を支配し、いつか俺様の隣で俺様と同じ考えを持ち行動するようになる…』
心の中を先程の空虚感が襲うと、頭の中で声がし、レンは大きく目を見開いた。
全身のヴォルデモートにつけられた傷が、そこに心臓があるのではないかと思うほどズキズキと痛む。
「大丈夫か?」
小声で囁くシリウスにレンは机に額をくっつけ、腹部のあたりで腕を交差させ、ギュッと自分自身を抱きしめる様に服を握りしめれば曖昧に頷く。
『此処にお前の求めるものはない…』
腕の傷が熱く痛む。
貴方の所にも私の求めるものはないわ。
レンはそう強く願えば、片手の拳に温もりを感じ、顔を上げずに閉じていた瞳を開けば、シリウスの手が見える。
シリウスの温もりが頭の中に現われた幻を消してくれるように広がり満たしていく。
「ありがと…」
レンが消えそうなほど小さな声で言えば、シリウスはレンの拳を優しくポンポンッと撫でてくれた。