シリウスは息を呑み、「大丈夫だ。目を閉じてゆっくりしていなさい。」と頭を軽く抱きしめると耳元で囁く。
シリウスが何に驚いたのかは判らないが、シリウスの温もりが先程の声も空虚感も消し去り心を静めてくれる様だった。
レンは言われた通りにまた突っ伏していれば、モリーはアーサーに助けを求め、アーサーは初めて口を開いた。
「モリー、ダンブルドアは立場が変化した事をご存じだ。今ハリーは本部に居る訳だし、ある程度は情報を与えるべきだと認めていらっしゃる。」
「そうですわ。でも、それと、ハリーに何でも好きな事を聞くようにと促すのとは全然別です。」
「私個人としては」
シリウスから目を離したリーマスが静かに言った。
「ハリーは事実を知っておいた方が良いと思うね…何もかもという訳じゃないよ、モリー。でも、全体的な情報を私達から話した方が良いと思う。湾曲された話を、誰か他の者から聞かされるよりは…」
リーマスの声色は穏やかだったが、モリーの追放を免れた伸び耳がある事を、少なくともリーマスは知っているとレンははっきり思った。
「そう。どうやら私は却下されるようね。これだけは言わせていただくわ。ダンブルドアがハリーにあまり多くを知って欲しくないと仰るからには、ダンブルドアなりの理由がおありの筈。それに、ハリーにとって何が一番良い事かを考えている者として…」
「貴方の息子じゃない。」
シリウスは静かに言った。
「息子も同然です。他に誰がいるって言うの?」
「私がいる。」
「そうね。ただし、貴方がアズカバンに閉じ込められていた間はこの子の面倒をみるのが少し難しかったのじゃありません?」
モリーの言葉にシリウスは椅子から立ち上がりかけたが、それよりも早くレンは立ち上がりモリーを睨みつける。
「貴方が考えている程シリウスは悪い人じゃないわ。私の父をそんなに貶さないで下さい…!」
レンが初めてモリーに大きな声で反論すれば、モリーは吃驚した様にレンを見つめた。
「レン。どんなに貴女の側に居ても、シリウスは貴女の父親ではないのですよ!?貴女のお母さんは…」
「判っているわ。どこの馬の骨とも判らない人の穢れた子供だって言いたいのでしょう?」
「レン!」
リーマスがレンを止める様に名を呼び、レンは頭を片手で抑え、初めて沢山の人の前で苦悶の表情を見せる。
モリーの一言が、今まで2人の父親が傍に居てくれる事で手に入れられた親の愛情が全てまやかしの物だと言われている様に感じてしまったのだ。
自分でも何でこんなに心が乱されるのか判らなかった。