第13話
「あー…。」
小脇に抱えられた赤ん坊が、抱えている男が歩く度に身が揺れ、気持ち悪そうにそう声を漏らす。
「これは闇の魔法使いとして私の片腕とお前がなる為には、必ず見せなくてはと思っていた。いずれはお前がやるんだぞ。」
この聞き飽きた台詞で、レンはいつもの夢だという事に気付く。
だが、いつもは憂いの篩で見ているかの様にその場に自分がいる事が多いかったのに、今回は自分がまるであの時に戻ったと思わせる程にリアルな夢だった。
そんなレンの思いには気付かずに夢は進んでいき、レンを抱えるその男は一軒の家をじっと見つめていた。
カーテンが開いており、小さな居間に青いパジャマの人影が見える。
その人物は背が高く、くしゃくしゃの黒髪に眼鏡をかけている男性だった。
男性は杖先から色取り取りの煙の輪を出せば、其処にいる赤ん坊は笑い声をあげ、小さな手で煙の輪を掴もうと手を伸ばしている。
其処に深い赤みのある色をした長い髪の女性が入ってくると、男性は赤ん坊を抱き上げてその女性に渡す。
その2人の笑顔と赤ん坊の表情は幸せそうに微笑んでいた。
見ていた男は門を押し開けると、微かにそれが軋んだが、住人は気付いていない様だった。
いつもよりとても詳細な夢だな…と、レンは思わず思ってしまう。
手を動かそうとしても、逃げてと叫ぼうとしても、赤ん坊の姿のレンは何もいう事を聞かなかった。
まるであの時を詳細に再現しているような夢で、心の中に恐怖心が広がっていく。
男は空いている手で杖を取り出してドアに向けると、ドアがパッと開き、男はそのまま敷居を跨ぐ。
するとあの眼鏡の男が玄関ホールに走って出て来ては「リリー、ハリーを連れて逃げろ!彼奴だ!」と叫ぶ。
「でも…」
「良いから行くんだ!」
「あー!!」
抱えられていたレンがそれに暴れだすと、眼鏡の男が瞳を大きくしたのが判る。
「レン…?どうしてキミが此処に…お前、レンに何をした!!シリウスとアクアはどうした!!」
「俺様の子に何をしようと貴様には関係あるまい。」
赤ん坊を小脇に抱えていた男は高笑いをすると、死の呪いを眼鏡の男にかけるが、子供が大暴れした所為でそれは男の髪を掠る。