「あの夢?」
「血の力がみせる記憶の夢だ、シリウス。」
そうリーマスが小さな声で言えば、シリウスはそれが通じたのだろう、何度か頷けばレンを強く抱きしめてくれた。
「…久し振りに…最初から最後までみたの…」
そうやっと声を出したレンの声は酷く掠れ、シリウスは「そうか…。」としか言えなくなってしまった様だった。
「レン、これでも飲みなさい。少しは気持ちが落ち着く。」
そうリーマスに言われれば小さく頷いて2人の間に座り直しては、マグカップを両手で包み込む様に持ち、ゆっくりとそれを飲み始めた。
甘みが口の中に広がり、何処かほっとさせてくれる。
「でも…今回のはいつもと違ったわ。…あの時に戻った様に詳細で痛みも判る位リアルな夢で、最後は真っ暗な中に意識だけあって、ヴォルデモートの声がしたの…あの時、お前は俺様と一緒にポッター一家を殺した。本当のお前を思い出せ…って…。」
カップに口をつけたまま小さく独り言を漏らせば、2人は心配そうにレンを見つめていた。
「レン、そんな夢のヴォルデモートに惑わされてはいけない。本当のお前は今此処にいる。赤い瞳だろうが、青い瞳だろうがそんな事は関係ない。お前はお前だ。いいね?」
そう言い聞かせる様に言うシリウスに、レンは大きく頷いて見せた。
「…晩御飯の時にもヴォルデモートの声がしたわ。それは捕まっている時に言われた言葉が聞こえて傷が痛んだだけだから、幻って判っている。それが怖いとかじゃないのよ。それで寝ようとしたら…自分のものでないような感覚に襲われて…でも、寝なきゃって思って寝たらあんな夢見ちゃって…。」
レンはそれ以上、上手く言葉に出来ず「悪夢で不安になるなんて子供みたいね」と小さく零して誤魔化せば、コップの中のものを飲み干す。
2人は意味有りげに視線を合わせたが、それに関してレンの前で何か言うつもりはない様だった。
「驚いた。そこまで殺されかけてヴォルデモートが怖くないとは、愛娘殿は余程肝が据わっている様だ。」
シリウスが揶揄うように言えば、レンの髪を?き乱すように少し乱暴に撫で回す。
「そうね、死に損なったのに怖いとは思ってないみたい。そんな事よりも2人に嫌われてしまったり失う事の方が怖いわ。またあそこでひとりぼっちになる事が堪らなく嫌で恐ろしい…弱くなったって自分でも思うの。」
「レン、それは弱くなった、とは言わない。人は守る者の為に強くなれるものだ。愛や信頼、護りたいという気持ちは大きな武器になる。覚えておきなさい。」
シリウスはそう嬉しそうにレンの事を見て自慢げな表情をしてくれる。
その後、シリウスはレンをベッドまで運び、彼女が眠るまでずっと傍に居てくれた。
手を繋ぎ傍にいてくれるだけで、先程の様な変な感覚に襲われる事もなく、こんなにも心強いものだとレンは思わなかった。