第16話
その日の午後は客間のガラス扉の飾り棚を皆が片付けていた。
勿論レンは見ているだけ、になるのだが…。
多くの物が埃っぽい棚から離れるのを嫌がった為、作業には相当な集中力を要しているようだった。
シリウスは銀の嗅ぎ煙草入れに嫌というほど噛まれ、あっという間に気味の悪い瘡蓋が出来て、手が硬い茶色のグローブのようになった。
青褪めるレンに「大丈夫だ」と笑いかけ、興味深げに自分の手を調べ、それから杖で軽く叩いて元の皮膚に戻す。
「多分、瘡蓋粉が入っていたんだ。」
シリウスはその煙草入れを棚から廃棄物を入れる袋に投げ入れた。
その直後ジョージは後ろで見ているレンに口元でしーっと人差し指を立てウインクひとつすれば、自分の手を念入りに布で巻きそれをそのポケットにこっそり入れ、レンは小さく笑った。
シリウスの手にロケットが取られれば、レンはハッとした。
「シリウス、それは捨てたら駄目よ。」
「どうした?」
「どうしても…判らないけれど、それは捨てたら駄目。要らないのなら私に頂戴?持っていなければいけない気がするの。」
シリウスはレンの言葉にまじまじとペンダントを見つめ、それを開こうとしたがびくともしないそれに小さく溜息を吐く。
「この屋敷にある物を見ただろう?どんな魔法がかかっているか判らない危険な物をレンに贈る事はできない。別の物を今度贈るさ。」
そう言い、レンの意見を却下すれば廃棄の袋の中へ入れてしまった。
レンはどうしてもそれを捨ててはいけないと心の中の冷たい声が騒ぎ、それから視線を逸らせずにいた。
直後、ドクンッと心臓が大きく飛び跳ねるのを感じると目の奥に激痛が走りその籠で蹲ってしまえば、それに気付いたジョージが気遣わしげにレンに声をかけ、シリウスもその声に振り向けばレンの様子に慌てて駆け寄った。