ゴツゴツした石壁に松明が掛かり其処を照らす場所まで来ると「エレベーターがまだ此処まで通っていなくてね。クレスメントに歩かせてしまって申し訳ない。」とファッジは人の良さそうな笑顔をレンに向け、レンは小さく首を振り「気にしないでください」と答えた。
法廷十号…そう書かれた黒々と厳しい扉の前に来れば、ゆっくりと中へ入っていく。
其処には何人もの魔法使い、魔女がおり、レンの姿を見れば皆の低い声が辺りに響く。
「今回はあのクレスメントにも同席してもらう事になっておる。彼女には公平な目で魔法省の為になる決断をしてもらいたいと思っている。」
そう言うとファッジは自分の隣にレンを座らせれば、其処にハリーが到着するのを待っていた。
皆…知っているのだろうか?時間が変更になった事をハリーは知らないと。
「ふふ。お初にお目にかかりますわ、ミス・クレスメント。」
甲高い少女の様なその声にレンは其方へと視線を向けると、いつもの冷たい笑みを浮かべて会釈をした。
「わたくし、ドローレス・ジェーン・アンブリッジと申しますの。…今年は色々と貴女様とお会いできる機会が多くございますから…ご挨拶に。」
「ご丁寧に有難う御座いますわ、えっと…アンブリッジ上級次官。若輩者故至らぬ点があると思いますが、ご指導ご鞭撻の程をよろしくお願い致します。」
レンは丁寧に頭を下げれば、アンブリッジはまた小さく笑み「とんでもございませんわ」とレンに言う。
その人の仕草の一つ一つが、本能的に彼女とは気が合わないとレンは感じさせ、それ以上会話をする事もなく小さく笑んで終わらせてしまった。
暫くすれば法廷の扉が重々しい音を立て1人の人物が中に入ってきていた。
顔色が悪く、緊張している面持ちだ。
息はあまり乱れてはいなかったが、額に汗が光る辺り、途中から慌てて走って来たのだろう。
「遅刻だ。」
「すみません。僕…僕、時間が変更になった事を知りませんでした。」
「ヴィゼンガモットの所為ではない。今朝、キミの所へ梟が送られている。着席せよ。」
ファッジは相当ハリーが気に入らない様子なのだという事がレンには判った。