第19話
着いた先はレンの家だった。レンはルシウスの家へ連れて行かれると思っていた為、驚き辺りを見渡したほどだ。
此処ならば誰にも邪魔はされない…同伴がレンならば、許可を伺わなくても家に入る事が出来る。と考えたのだろう。
「姫君の行動には流石に私めも驚かされました。」
「そうね、まさか私が父に従わないなんて思わなかったでしょうね。」
「勿論でございますとも。だが、姫君は反抗期なだけなのだと、我が君もご納得いただいています。姫君…手遅れになる前にお戻り下さい。」
「私はアイツの手足になるつもりはないわ。」
「姫君はまだ判っておられない様だ…我が君が蘇った事が何を意味するか…」
ルシウスはレンに一歩、また一歩と近付きレンはそれから距離をとるように下がっていく。
が、直ぐに背は壁へと突き当たってしまい、ルシウスがレンの目の前で冷たく微笑んでいる。
「子は親に従うものですぞ。」
そう、ルシウスの腕が再度包帯を巻いたレンの杖腕を掴み上げ指先でなぞれば、手首からジワリと血が滲み流れて行く。
ルシウスはそこに口付け唇についた血を舌先で拭えば、レンは眉を少し顰めただけだった。
この血の中に流れるアイツの血が愛しいのだろう。
それでも無言の睨み合いが続けられ、ルシウスの手がレンの血で濡れていく。
「強情な姫君だ…我が君は姫君を愛していらっしゃる。勿論私もですが。貴女を受け入れられるのは、あのお方しかおられないのですぞ。所詮あの者達も”クレスメント”としての力を欲しているだけなのです…。」
「貴方の言う通りだとして、よ?ヴォルデモートは一度でも私を抱きしめてくれたかしら?血の繋がらないルシウスだって、私が怖い夢を見た時は抱きしめてくれたわ。それは彼奴の子供だから、クレスメントだからかもしれない。…それが子供ながらに判っていて寂しかったけど、その温もりが愛情に飢えた私には嬉しかったの。でも彼奴は…私の心の渇きを潤してくれる様な人ではないわ。あの人は愛なんて知らないもの。」