第20話:薬では駄目
授業が終わるとレンは気になっていたことを聞こうとスラグホーンのところへと駆け寄り、遠慮がちに先生に声をかけると、スラグホーンは驚いた様な表情をするが、声の主がレンだとわかるとにっこりと微笑んでくれた。
「どうしたのかね?」
「あの…お聞きしたい事があって…変な事を聞いても、怒ったり変に思ったりしないでくださいますか?」
両手に握ったままの小瓶を指先でいじりながらそういうと、スラグホーンは勿論だとも。と返事をしてくれ、レンは安心したようにホッと息を吐く。
「その…私…なんて言ったらいいか…その、幼い頃から1人が多かったからかもしれませんが、疎い感情があるんです。特に愛というものに関しては…よく解らない事が多くて…でも最近、家族愛は判って来たんです。名付け親にも私は人を愛せない子じゃないって言ってもらえて…でも、周りの子達が話している様な感情がいまいち判らないんです。」
「キミの幼い頃の話は噂で聞いているよ、レン。だからこそ私はキミがこんなにも聡く慎しみ深い、優しい子に育った事が不思議に思うのと同時に、レンの絶え間ない努力とそれを支えてくれたご家族に感謝している。」
そう優しい顔をして言うスラグホーンに、レンは思わず口元を緩ませてしまう。
「推測するに、キミはこのアモルテンシアが自分の知らぬ感情を教えてくれるのではないかと期待を抱いていたんだね?」
「はい。最終手段として。でもその薬は…本当に恋とか愛とかそういったものは教えてくれない薬。なんですよね?」
「あぁ、そうだとも。本物の愛というものは、こんな薬で与えられる強い執着とはまた違うものだ。」
「そう、ですか…。間違いだとはっきり判って良かったです。有難うございました。」
レンは深々と頭を下げれば、スラグホーンは優しくレンを撫でてくれ、レンは思わず頬をわずかに赤らめた。
「心は薬で成長させるものではない。焦ってもいいことはないはずだ。まだキミと出会って間もないが、噂から察するに、キミは慈愛という愛情に満ちた素晴らしい娘さんだと思っている。」
「それは、褒めすぎです、先生。…えっと、本日はとても為になりました。」
レンは再度有難うございましたと、スラグホーンに頭を下げるとスラグホーンは自分をすぐに頼ってくれた事を嬉しそうに微笑んでくれ、レンは褒めの嵐から逃げる様に夕食をとりに大広間へと向かった。
辺りを見渡すと既に誰もおらず、レンは置いてかれており、皆レンがついてきていない事に気付いていなかった様だ。
「存在感薄いのね、私って。」
そう呟き零し溜息を吐く。
待っていて欲しかった訳でもないが、なんか少し寂しかったのだろう。
(P.91/全P.208)
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