ロンが嫌だと言いたげに首をまだ降り続けている。
レンは紅茶をぐいっと飲み干せば立ち上がり、鞄の中から母親の形見のローブを取り出しそれを羽織る。
「んなら、頼んでいいか?」
「えぇ。病気を癒したことはないから、うまくいくかはわからないけれど…」
「そんでもええ。僅かでも可能性がありゃ、なんでも試してやりてえんだ。」
ハグリッドは俺も行くと立ち上がったがそれをレンは制した。
「ハグリッド、私についてくるより、しなきゃいけない事があるでしょう?怒ってないって、本当は判っているって。ハリー達に気持ちをちゃんと伝えなきゃ。…私、伝えたい気持ちは伝えたいって思った時に伝えなきゃダメだって知っている。…1人で行っても罰則はなしにしてね?」
レンはくすりと笑うと、行ってきます。と一言漏らし風の様に去って行った。
「もう居ない…レンってあんなに足が速かったっけ?」
「あのローブのお陰だな…母親の形見、で…体を軽くしてくれる。アクアが羽の様に軽くなったと俺に自慢しとった。」
ハグリッドがチーンッとエプロンで鼻をかんだ。
レンは急ぎ足でうる覚えの森の中を走って行った。
流石母の遺したものだ。
体がとても身軽で、一足一足がとても速く感じる。
しばらく森の奥へと進んでくれば、そこには大蜘蛛のコロニーがあった。
レンの侵入に子供達は興奮した様に鋏を鳴らす。
「アラゴグ。具合が悪いのに、訪ねてきてごめんなさい。」
脚を曲げて小さくなる様にしているアラゴグにレンはそう声をかけると、彼の口のそばに近寄り自分の匂いを嗅がせる。
「あぁ…この匂いは…アクアの娘、か…」
「えぇ。アラゴグがとても具合が悪いって聞いて…癒せたらって思ったの。少しだけ触らせてもらってもいいかしら。」
「ああ…好きにすると良い…ワシは、年をとった…平等に訪れる死を受け入れる覚悟はできている…。」
レンはそう言うアラゴグに体全体で触れ「クレスメントの血よ…我に従え…かの者を癒したまえ…。」そうレンが呟く様に言い瞳を閉じると体全体が淡く光り、アラゴグをも淡く光らせる。
「あぁ…温かい…懐かしい、温もりだ…。」
「貴方はまだまだ元気に生きなきゃ。ハグリッドがとても悲しむわ」
「実に…お前達は優しい人間だ。」
「そんな事ないわ。友情のために本能を抑えてる貴方の方がよっぽど優しい。」
アラゴグはそれに返事はせず眠る様にして癒しを受け止めたが、暫くすると「もう良い。それ以上はするんじゃない。」とレンをやめさせる。
(P.110/全P.208)
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