夕日が見え始めた頃、レンは立ち上がり台所で作業をし始めたモリーの側へと駆け寄る。
「おば様。何かお手伝いさせて下さい。」
「今日はゆっくりしていて良いのよ?」
「…母と、そうやってキッチンに立つの、憧れていたんです。ダメですか?」
そう言うと、モリーはレンを思いっきり抱きしめた後、料理を手伝わせてくれた。
レンは髪をまとめ上げてから一緒に野菜を切ったり、鍋の火加減を見ていたり、味付けを教わったりしていれば、それを双子やハリーが眺めていた。
ロンは何やらハリーに話しかけていたし、ジニーはペットと戯れている。
その日の夕飯は美味しいやらおかわりやらやけに聞こえ、レンは思わず笑ってしまった。
「此処にいる間はジニーの寝間着でも借りてちょうだいね?今度用意しておくわ。」
「ママ、それは無理だよ」
ロンは思わずツッコミを入れ、モリーは小さく首を傾げている。
「ジニーのじゃ背丈は足りるけど、横が足りない。」
ロンがそう言った途端、レンはロンを睨みつけ、ジニーの平手がロンの背に炸裂。
大きな乾いた音と、ロンの痛がる声が響き渡れば、帰って来ていたビルやフラーが思わず笑った。
「ロナルド、デリカシーのない男は嫌われるぜ?そういう時はさりげなく違うものを差し出してやるもんさ。心の底ではそう思っててもな。」
どこからか、ジョージが上だけ服を持って来ては、今日はこれで寝とけってと渡し、取り敢えずレンはそれを受け取る。
下はジニーが貸してくれ、足早にジニーの部屋へ行きそれに着替えるも、どうも落ち着かない。
「眠れない?」
「あの時みたいになったらどうしようって思って…私の所為で皆が危険に陥ったら…。」
「大丈夫よ」
「でも…ちょっと下に行くわね。」
レンは杖を簪がわりにまとめた髪にさして降りて行くと、アーサーが帰ってきておりにっこりと微笑んでくれた。
「おじ様、お帰りなさい。遅くまでお仕事お疲れ様でした。」
アーサーは可笑しそうに笑ってはただいま。と言ってくれる。
「ちょっと玄関先をお借りしても良いですか?」
「どうしたんだい?」
「何だか落ち着かなくて…」
そういうレンに大丈夫ですよとモリーは安心させようとするが「こういうのは口で言っても受け止めるのは難しい。レン、気にせず辺りを見回っておいで。だが冷えるから、暖かくしていきなさい。」と言ってくれる。
「直ぐ戻りますから、大丈夫です。おじ様ありがとう。」
そっと玄関から外に出てゆっくりと歩き出せば、心配そうにするモリーの声と「クリスマスは彼女にとって落ち着けるものではない。大切な者を奪われた日だ。落ち着けるように好きなようにさせてあげたほうがいい。」とアーサーはモリーを諭しているのが聞こえた気がした。
(P.167/全P.208)
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