「いやいや、これはご機嫌を損ねてしまいましたかな、ミス・クレスメント。」
「スクリムジョール魔法省大臣閣下。私の気持ちは以前と変わってはおりません。私は平和の為に力を使う事は惜しみませんが、今の魔法省の力になるかどうか、しっかりと見極める必要があるかと。…私の大切な友人兼家族に誤解を与えるような事はお控え願います様…。」
スクリムジョールの笑みが若干引き攣った。
「内緒話の邪魔をして申し訳ありません。私が移動しますので、ごゆっくりと。」
動物達を消して黒い犬と視線を合わせてから立ち上がれば、ハリーがいつの間にかに隣に立っておりレンの手をそっと掴んだ。
「もしも僕達が魔法省にしょっちゅう出入りをしていたら、魔法省のしていることを認めている様にみえませんか?」
ハリーはレンのいる側で話をしたかったのだろう、手を離そうとせずに続きを話し始める。
「まあ、そうだ。それも1つには我々の望むことで…。」
「上手くいくとは思えませんね。」
ハリーは愛想よくそういう。
「というのも、魔法省がやっている事で僕の気に入らないことがいくつかあります。例えば彼女に対しての梟の扱いや彼女を利用しようとしたり…スタン・シャンパイクを監獄に入れるとか。」
スクリムジョールの顔が硬くなった。
「誤解を与えるような言い方をしてしまったのは申し訳なかった。ミス・クレスメント、非礼を詫びよう。」
「いえ…」
「今は危険な時だ。何らかの措置を取る必要がある。君たちはまだ16歳で…」
「都合のいい時は大人で悪い時は子供とレンをそんな扱いするのはよして下さい。これ以上、レンを魔法省の都合に振り回して欲しくありません。12歳の子供に普通の子供として生きる権利を奪い、レンがクリスマスを楽しめなくなる様な深い傷を更に深いものにした。あの誰もいない広い家に居続ける彼女の気持ちが解りますか?どれだけ辛く悲しい思いをクリスマスの度にしているか判りますか?」
ハリーの言葉にレンは瞳を大きくし、今まで他人の大人の前では隠して来た感情が露わになりそうになる。
「ハリー…有難う。私の事はいいのよ。」
「良くないよ。」
ハリーははっきりとそう言い真っ直ぐにスクリムジョールを見つめている。
沸々とハリーの中には怒りが沸き起こっている様だったし、大きな黒い犬も唸り声を上げている。
「それは私のした事ではないが、確かに無慈悲ではあったであろう。だが、クレスメントを断絶させない為には致し方ない事だ。」
「それも魔法省の都合です。今度はレンがお嫁に行かない様に邪魔をするかお婿を探して来ますか?」
スクリムジョールはハリーほど怒りをうまく隠せてはいなかった。声はもう冷たいものへと変わっている。
(P.178/全P.208)
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