「この子にぬいぐるみを与えたのは貴方ね?」
「そ、そうでございます。」
そう屋敷しもべが答えると、母親の指先が紫に怪しく光る。
するとすぐさまその腕にアクアがしがみ付き、大粒の涙を流しながら「ごめんなさい!もう欲しいなんて言わない!アクアもっと良い子になる。だから、だから許して!!」と懇願。
母親はそんな子供を払い飛ばし、その指先を屋敷しもべに触れさせると、屋敷しもべはキーキーと泣き叫びながら触れられた部分から皮膚が紫色に爛れては肉が露わになり、それがだんだんと腐っていく。
まるでホラー映画を見ているかの様な光景だったが、母親はまるで公開処刑を楽しい劇を見ているかの様に見つめ、アクアは母親に懇願してもどうにもならない事を理解すれば、その屋敷しもべの元へ走っては「アクアが欲しいなんて願ったから…ごめんなさい、ごめんなさい」と言いながら彼を抱きしめようとするも、それもオッドアイの少年…彼女の兄に羽交い締めにされる様に止められていた。
次第に肉が腐り消えていき骨が見えた辺りで、その骨は砂となって消え、場がアクアの泣き声以外聞こえなくなった頃には小さな砂の山がそこにあっただけだった。
少年は手を放し、アクアは床にへたりこみ「これに懲りたらもう悪い子になってはいけませんよ。」とにっこり笑って告げて立ち去る母親。と、それについていく兄と父であろう男性。
アクアは小さく「はい。」と返事をしたが、その瞳は先程までの少女の瞳ではなく、復讐に燃える様な決して子供のする目ではない目をしていた。
そこで記憶は終わったのだろう、その風景がシャボン玉の中に吸い取られていく様に消え、辺りがまた闇に包まれるとレンは小さく息を吐く。
そんなレンの手を取り「大丈夫?」と心配そうに声をかけてくれるハリーにレンは小さく頷いた。
「ある方が、クレスメントは滅びと護り、癒しのスペシャリストだって言っていましたが…あの力が滅びの魔法なんですね?」
「左様。あの力を使うにはより多くの代償が必要となるじゃろうが、レンの祖母はヴォルデモートの為にその力を使う事を惜しまなかったのじゃ。」
「…信じられない…。」
「どうしてですか?レンのお祖母さんも服従の呪文に?」
「いや、愛じゃよ、ハリー。彼女は献身的に尽くし心の底から彼を愛しておった。愛にその目を曇らせてしもうたのじゃ。」
恋は盲目とはよくいったものだ。と、レンは思わず思ってしまった。
善悪が分からぬほどにその人に心酔するというのは、一体どういう気持ちなのだろうか…。
(P.199/全P.208)
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