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ダンブルドアは杖をさらに高く掲げ、光が壁を照らすようにした。
壁紙にどす黒いベットリとした何かが飛び散っており、ハリーが小さく息を呑むと「気持ちの良いものではないのう。」とダンブルドアは振り返っては低い声で言う。
レンはハリーに手を離して貰えば、まだそんなに乾いていないべっどりとしたそれに近付けば、ふふふっと小さく笑う。
ダンブルドアは注意深く部屋の真ん中まで進んでは足下の残骸をつぶさに調べていたところだったがその顔を上げてはレンの方に視線を向けた。
「大丈夫よ、ハリー。そんなに恐ろしい事は起こっていないし、そこら辺に死体があったりはしないわ。」
「そうかな…これはどう見ても争いがあった跡だろう?その人が連れ去られたんじゃないか?」
「いいえ。そんな事はない筈よ。」
ダンブルドアに視線を向ければ「遠慮はいらない、やってしまいなさい。」と言いたげなその悪戯っぽい瞳にレンは素早く杖を振るうと、膨れすぎた肘掛け椅子のクッションにその魔法が命中。
「こりゃ見事だ!」
肘掛け椅子が堂々と太った禿げの老人に姿を変えて行く様を見ながら「こんばんは、ホラス。」とダンブルドア。
ハリーは口をあんぐりと開けていた。
「初対面ですのに、ご無礼を致しまして申し訳ございません。」
「いやいや、気にしてはおらん。」
ダンブルドアは面白がっている様にその様子を眺めていた。
「お嬢さん、なんでバレたのかね?」
飛び出した目と、堂々たる銀色のセイウチ髭。
ライラック色の絹のパジャマに羽織った栗色のビロードの上着に付いているピカピカのボタンと、ツルツルの頭のてっぺんに杖灯りを反射させながら男は言い、レンはダンブルドアを見遣れば発言をしても良さそうに小さく頷き、レンはゆっくりと口を開いた。
「飛び散った血が人の血の匂いではなく獣の香りがした事です。このような出血量にもかかわらず、その血の持ち主である生物の亡骸がどこにも見当たらない事。そもそも魔法族の家をこんなに荒らすという行為をするのは大体死喰い人だと推測されますが、家の上にはそれを示す闇の印もない。…その事からちょっとワイルドな隠れんぼ、なのかなと考えました。」
「あぁ、闇の印か…何かが足りないと思っていた。…まあ何れにせよそんな暇がなかった。キミ達が部屋に入ってきた時には、腹のクッションの膨らみを仕上げたばかりだったし。」
男は自分の変装がバレ恥じ入る姿など微塵にも見せず大きな溜息を吐き、その域で口髭の端がひらひらはためいた。
「片付けの手伝いをしましょうかの?」
ダンブルドアが礼儀正しく聞くと、男は「頼む」と一言。


(P.7/全P.208)
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