背の高い痩身の魔法使いと背の低く丸い魔法使いが二人背中合わせに立ち、二人とも同じ動きで杖をスイーッと掃くように振った。
家具が飛んで元の位置に戻り、飾り物は空中で元の形になったし、羽はクッションに吸い込まれ、破れた本はひとりでに元通りになりながら本棚に収まった。
石油ランプは脇机まで飛んでいき、また火が灯った。
おびただしい数の銀の写真立ては破片が部屋中をキラキラと飛んで、そっくり元に戻り、くもりひとつなく机の上に降り立った。
裂け目も割れ目も穴も、其処ら中で閉じられ、壁もひとりでに綺麗に拭き取られた。
レンはハリーの肩を指先でトントンと叩くと、目の前で起こった事に目を奪われていたその視線をレンに移動すると、レンはハリーの足元に視線を移す。
ハリーも其処に視線を落とすと、ハリーの足元ではシャンデリアに戻りたそうにムズムズと動くシャンデリアの破片があった。
どうやら一部をハリーが踏んでおり戻れなかったようだ。
ハリーは小さく口元を緩ませては足を退かすと、それはシャンデリアがガリガリチャリンチャリンという喧しい音をたてては天井ねじ込められやっと落ち着いた其処にチャリンッと音を立てて収まった。
「ところであれは何の血だったのかね?」
「あぁ、あの壁か?あのお嬢さんは随分と鼻が良い様だ。彼女の推測通り人の血ではなくドラゴンだ。…ワシの最後の一本だが、この頃値段は天井知らずでね。いや、まだ使えるかもしれん。」
ホラスが気軽な口調で言うとドスドスと食器棚の上に置かれたクリスタルの小瓶に近付き、瓶を明かりに翳して中のドロリとした液体を調べては「フム、ちょっと埃っぽいな。」ともらしては瓶を戸棚の上に戻し溜息を吐いた。
そしてハリーを見遣り、額の傷跡を見遣り「ほほう。…ほっほう!」と何やら声をもらす。
「こちらは…」
ダンブルドアが紹介する為に進み出た。
「ハリー・ポッター。そしてその隣がレン・クレスメント。ハリー、レン、こちらがワシの古い友人で同僚のホラス・スラグホーンじゃ。」
レンはそれに礼儀程度に頭を下げて軽く挨拶をするも、スラグホーンは抜け目のない表情でダンブルドアに食ってかかった。
「それじゃあ、その手で私を説得しようと考えた訳だな?いや、答えはノーだよ、アルバス。」
「スラグホーンは決然と顔を背けたまま、誘惑に抵抗する雰囲気を漂わせてハリーの側を通り過ぎた。
「一緒に一杯飲むくらいのことはしてもよかろう?」
「昔のよしみで?」
スラグホーンは躊躇いを見せたが、よかろう一杯だけだ。と無愛想に言った。
ダンブルドアはハリートレンに微笑みかけ
つい先ほどまでスラグホーンが化けていた椅子とそう違わない椅子を指して座る様に促した。
その椅子は火の気の戻ったばかりの暖炉と、明るく輝く石油ランプのすぐ脇に2脚あった。
ダンブルドアは自分達をなぜか目立たせたがっているとはっきり感じながらも「失礼します。」とレンは小さく言っては腰掛けた。
確かにデカンターとグラスの準備に追われていたスラグホーンが再び部屋を振り返った時、真っ先に二人に視線が行った。
「フンッ」
まるで目が傷つくのを恐れるかの様に、スラグホーンは急いで目を逸らし、レンはハリーと視線を合わせるとお互いに小首を傾げたが、取り敢えず静観していよう。という事で同意した様だった。
スラグホーンは勝手に腰掛けていたダンブルドアに飲み物を渡し、ハリー達に盆をぐいと突き出してから元通りになったソファにどっぷりと腰を下ろし不機嫌に黙り込んだが、足が短すぎて床に届いてはいない。
(P.8/全P.208)
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