次の日、ギルは早速ホグワーツに働きに行き、バックビークはダンブルドアに連れていかれた。
リーマスもその後間も無く仕方なさそうに任務に戻り、帰れる時は帰ってくるからとレンに勝手に約束をし頬に口付けてから出かけて行った。
色々なものが変わり自分から周りに奪われていく様な不思議な感覚に襲われ、レンは思わず苦笑してしまう。
今まで必ず誰かがいたという状況の数年が恵まれていただけなのだ。
その日の夜、見知らぬ訪問客が訪れた。
その名は『ルーファス・スクリムジョール』レンの頭の中でその名が現れるとレンは小さく首を傾げる。
「ミス・クレスメント。突然の訪問申し訳ございません。新しい魔法省大臣への就任が決まりましてご挨拶に参りました次第でございます。」
そう頭の中に声が響けばレンはその者の訪問を許可した。
黄褐色の髪やふさふさした眉は白髪混じりの年老いたライオンの様な風貌で、細縁眼鏡の奥には黄色味がかかった鋭い眼があった。
僅かに足を引き擦ってはいたが、手足は細長く、軽やかで大きな足取りには一種の優雅さがあり、俊敏で強靭な印象が伝わってくる。
「お初にお目にかかります。ミスター・スクリムジョール。」
「突然にも関わらずお会いしてくださり、感謝致します。ミス・クレスメント。この度魔法省大臣に就きした故、貴女様には是非ご挨拶をと。」
「態々御足労を恐れ入ります。」
レンは椅子にかけてくださいと言えば、この様なものしかございませんがと、茶と茶菓子を用意し、お気を遣わないでくださいとスクリムジョールは恐縮した様子だった。
「本来なら私からご挨拶にお伺いせねばいけませんのに…申し訳ございません。新聞も読んでいなければ、此処は外部から隔離された場所故…。」
「私共が行ってきた事を考えれば、それも至極当然の事でしょう。アンブリッジ女史の話によれば、ホグワーツでは貴女様に多大なご迷惑をおかけしたと…本当に申し訳ない。私に代わりましてからは、このような失態は二度と犯さぬ様、心して行きます故…どうか…」
あぁ、この人もファッジと同じ部分があるのだなとレンは密かに思ってしまった。
クレスメントが魔法省を見放した。その事実だけは避けたいのであろう。
「アンブリッジ女史がどの様にお話しなさったのかは私は存じ上げませぬが…私は世の平和を願っているだけです。その為になら私の力を使う事も厭いません。が、魔法省に協力するかどうかは、その都度しっかりと考えさせて頂きたく思っております。」
「えぇ、その様にご慎重になられるのも判ります。共に戦えます様、私共も精進して行きます故。」
レンはそれに口元だけ笑み小さく頷いた。