レンはセドリックの杖の事を見てもらおうとオリバンダーの店を訪れた。
このままセドリックの遺志を継ぎ使う事がこの杖にとって良い事か判らなかったからだ。
レンが幼い頃に貰った杖は随分と昔に買った所為もあってか、久し振りに足を踏み入れる此処に変に緊張感があった。
「お久し振りです。」
「あぁ、ミス・クレスメントだね。その後杖の調子はどうだい?」
「実は…一昨年に杖を奪われたまま何処にいったか判らなくなってしまって…友人の形見になってしまった杖をそれから使っていたんです。それがこの杖の為になるのかお聞きしたかったのですが…去年は大怪我で来れなかったので、やっと此処に来る事ができました。」
その言葉にオリバンダーは知っていたのか大きく頷き、レンから杖を受け取ると注意深くその杖を調べた。
「30cm、トネリコの芯に一角獣の毛…ふむ。この杖はセドリック・ディゴリーの物だね?」
「はい。よくご存知で。」
「ワシは売った杖は全て覚えておる。…そうか…トネリコとは本来真の持ち主にのみ忠誠を誓い、元の持ち主が誰かに譲ったり贈ったりするとその力を失ってしまう杖での。この子も例外ではない様じゃ…真の持ち主の意思を聞き入れキミを助けたいという気持ちも少なからずあるようじゃが…本来の威力は発揮できていない様じゃな。」
「そうですか…」
オリバンダーは新しくレンの杖を選んでくれていた。
誕生日的には違う材質の方が良いようだが、その1つ前の材質がキミに選んで欲しいと思っている様だと持ってきてくれた杖をレンに手渡してくれる。
その杖を手にした途端、内から力が湧くような、しっくりと落ち着く様な不思議な感覚に襲われる。
「ふむ。やはりナナカマドとドラゴンの心臓の琴線、その杖の方が今のキミには合っている様じゃ。」
「有難うございます。」
オリバンダーの話では、ナナカマドという材質は高い防御魔法に優れているそうで、この杖を使っている者が悪事に手を染めた例は見た事がないそうだ。
理想的な持ち主は頭が良く心優しい人物だが、こうした善良な評価の反面、決闘では他の杖に匹敵するどころかそれに勝る力を発揮する事もある。そして力に優れたドラゴンの心臓の琴線珍しい組み合わせの杖だが、杖がレンに使って欲しいと選んだのだという。
レンはそれに表情を和らげてお礼を言えば代金を支払い、店を後にした。