第5話
しおりを挟む
「シャル、私が居ない間よろしくお願いします。ほらお友達とか呼んで好きに使って良いからね」
「はい、いってらっしゃいませ、お嬢様」
「帰ってきたら、また一緒に御茶しましょうね。…私、シャルが居てくれて良かった。貴方は私の誇りよ」
レンがそう言うとシャルは顔を真っ赤にして大きく頷いてくれ、レンたちは家を後にした。
漏れ鍋の暖炉まで飛んで、そこから駅までの道のりがやけに短く感じた。
この二回目になるプラットフォームもいつもと変わらず賑わいを見せている。
一年前は此処に別れを惜しむ者など何ひとつなかった。
「それじゃ、いつでも連絡してくるんだよ?」
「はい、リーマス。楽しい休暇になったわ。ありがとう」
「こちらこそ、楽しかったよ。」
ホグワーツ特急に乗り込み自分の荷物を最後尾の空いているコンパートメントに乗せてから、近くでレンは別れの挨拶をリーマスと交わす。
リーマスはレンを優しく抱き締め頬に口付けをすると、レンは少し頬を赤くしたが、同じようにリーマスにもした。
「また遊びに来てくれる?」
レンが不安そうにそう言えば、勿論と即答してくれレンは微笑む。
出発を知らせるベルが鳴ると、レンは恥ずかしそうに「もう一度だけ…」と小さな声で呟き零せば、リーマスは微笑み強く抱きしめてくれる。
目頭が熱くなる程こんなにも”別れを惜しむ”という事が自分にもあるとは思わなかった。
最後の最後までリーマスのこの優しい温もりを感じていたかった。
この手を離してしまえば…もう帰った時に彼はそこにはいない、自分の我侭で夏の休暇を一緒に居てもらっていたのだ。
…こんな温かい日常がまたいつ訪れるか判らない。
8/9
←前へ    次へ→
目次へ