暫くすれば扉が動く音がし、そちらの方に視線を向ければ、シリウスがそこに驚いた表情で立っていた。
「お帰りなさい、シリウス。」
その言葉に少しだけ複雑そうな表情を浮かべながらも、その部屋にあったボロボロのベッドの上に腰掛けてレンをじっと見つめる。
「何しに来た?」
「今日はクィディッチの試合なの。城にいる殆どの人が競技場にいるから…知られずに此処に来る絶好のチャンスじゃないかって思って、差し入れを…口実に貴方に会いたかったの。」
いつもと変わらぬ声色でそう言えば、シリウスは大きく溜息をついた。
このじゃじゃ馬娘…とか思っているのだろう。
シリウスの方へ近付き、ずっとローブの下で抱えていた物をシリウスの隣に置けばシリウスは驚いた顔をしてみせる。
「初めてキッチンに忍び込んだのよ?ちょっとドキドキしちゃった。」
そうおどけてみせるレンにシリウスの口端が僅かに上がった気がした。
「大丈夫よ、毒なんて入れる暇なんて無かったから。試合中に来たかったから急いでーって言ったら次々に持ってくるんだもの。私ってどれだけ食いしん坊に思われてるのかしら。」
レンの言葉にシリウスは返事をする事はなかったが、無言で持ってきた食べ物を食べてくれた事に、毒なんて入れる子ではないと信じてくれているようで嬉しかった。
少しの間、沈黙が走りレンは窓の外を眺め、天気を窺う。
「ハリー…大丈夫かしら…。」
「彼は飛ぶのが上手いらしいな。」
呟いた言葉に返事が返ってくるとは思わなかった。
それも自分を疑っているであろう人物と世間話が出来るとは…そうレンは驚いていると、シリウスは直ぐにそっぽを向いてしまった。