「それで大臣、どうしてこんな片田舎にお出ましになりましたの?」
「他でもない、シリウス・ブラックの件でね。ハロウィーンの日に学校で何が起こったのかは薄々聞いているんだろうね?」
ファッジは声を低くして、誰も聞いているものがいない様に警戒しながらそう話せば、噂なら知ってるとマダム・ロスメルタは答えた。
「大臣、ブラックがまだこの辺りに居るとお考えですの?」
「間違いない。」
「吸魂鬼が私のパブの中を二度も探し回っていった事はご存知かしら?お客様が怖がってみんな出て行ってしまいましたわ。…大臣、商売あがったりですのよ。」
マダム・ロスメルタは少し不機嫌そうにそう言えば、ファッジはばつの悪そうな声で、用心に越した事はない答えた。
「でもねぇ…私はまだ信じられないですわ。どんな人が闇の側に加担しようと、シリウス・ブラックだけはそうならないと私は思っていました…あの人がまだホグワーツの学生だった時の事を覚えていますわ。もしあの頃に誰かがブラックがこんな風になるなんて言ったら私はきっと『貴方は蜂蜜酒の飲みすぎよ』って言ったと思いますわ。」
「キミは話の半分しか知らないんだよ、ロスメルタ。」
ファッジがぶっきらぼうにそう言うと「最悪の仕業はあまり知られていない。」と付け加えた。
レンは手をぎゅっと握り締めた。
あのファッジがどんな風にシリウスを悪く言うのだろう…想像しただけでも、切なさや苦しさ、悔しさの感情に溺れてしまいそうだった。
「あんなに沢山の可哀想な人達を殺した、それよりも悪い事だって仰るんですか?」
「まさにその通り。」とファッジ。
「ブラックのホグワーツ時代を覚えていると仰いましたね、ロスメルタ。」
マクゴナガルは呟くようにそう言えば、マダム・ロスメルタは記憶を辿る様に、そして少し楽しそうに思い出を話し始めた。
ジェームズ・ポッターとシリウス・ブラックは親友同士でいつも一緒、影と形の様でいつもこのお店に来ていた様だった。