「なら僕はもう戻るけど…レン、僕達の所へ帰ってくる事も考えていてくれ。」
そう言うドラコに、レンは曖昧に笑んで見せれば、ドラコは自分のマントとマフラーをレンに着せる。
流石にレンは慌て始めるも「キミが風邪を引く。」そういって引こうともしなかった。
そんなドラコに申し訳なさそうにしていれば、ポケットから取り出したハンカチでレンの手の傷を手当する様にしてくれ、その場を後にした。
レンはそんなドラコにお礼を言いながら、後姿を見えなくなるまで見送れば、森の中へと歩いていく。
木を背に蹲っていれば、今度は別の訪問者が現れる。
蹲るレンの手に何かが当たる感覚がし顔を上げると、大きな黒い犬がその手に鼻を摺り寄せていたのだ。
「キミは…クルックシャンクスのお友達ね?…ごめんなさい、今は私に近寄らない方が良いわ。」
そう苦笑しながら伝えるも、犬は言葉が通じていないのだろう、レンの頬に顔を擦り付ける様に甘えてくれる。
「変わった子ね…私に警戒していたと思えば、今度はこの瞳を見ても一緒にいてくれるなんて…。」
レンはそのまま犬の首に腕を廻すように抱きしめれば、犬のどこか安心できるその温もりが慰めてくれている様に感じてしまい涙が溢れ止らなくなってしまう。
「クーン…。」
犬は悲しそうに鼻を鳴らし、レンは思わず顔を上げて安心させようと微笑んでみせると、犬は真直ぐにレンの事を見つめていた。
「ごめんね、嫌じゃ無いのよ?…少しね、嫌な事があったの。…でもそれは…自分でも言われても仕方ない事って判っているの…それでも自分勝手に傷付いて、それを幼馴染に指摘されてしまって…それでもっと沈んでしまうなんて…駄目ね。もし…あれが私の言葉じゃなかったら…信じてくれたのかしら…なんて考えてしまったりして。」
安心させようと微笑んでいたものの、そんな心の声を漏らしてしまえば、堪えていた涙が溢れて止まらなくなってしまうと、犬はその涙を拭う様に頬を舐めてくれ、レンは思わず声を上げて泣いてしまいその犬を思いっきり抱きしめてしまった。
「キミにまで心配かけてしまって…ごめんなさい…」
でも、もう少しだけ、側にいて…と消えそうなほど小さな声で漏らしてしまえば、犬は一度だけレンの頬にその頭を摺り寄せてくれた。
母の日記を初めて読んだ時、自分が存在している事すら申し訳なく思い最後まで読めなかったあの日を今も覚えている。
寂しさ…孤独感…傷の痛み…恐怖や罪悪感…そんな大きな闇に押し潰されそうになって泣いた夜も多くあった。