「先生は…シリウスが母に服従の呪文をかけていたとお思いですか?」
そう不安げにレンが聞けば、ダンブルドアはゆっくりと首を横に振った。
「ワシはそんな風には考えておらん。もし服従の呪文にかかっておったのなら、シリウスがアズカバンに行った後も彼を信じ、命を懸けてまで無実を訴え続ける…そんな事はしなかったじゃろう。2人の間には確実に決して崩れる事のない強い信頼や絆がある。」
キッパリとそう言ってくれ、レンはなんだかすっと軽くなった思いだった。
シリウスがそんな様な事をする人ではないという事は実際に会って判ったが、もしも万が一母とシリウスのとても強い絆…それが服従の呪文による偽りの絆だったとしたら…そう思うだけで、なんだか信じていたものが足元から崩れ落ちていきそうな気持ちだったのだ。
「先生は…その…シリウスが死喰い人で、ハリーのご両親を売ったとお考えですか?」
レンがそう聞けば、ダンブルドアは少し考える様に間が空き、真直ぐにレンを見つめる。
「難しい質問じゃの…。ハリーのご両親を裏切ってしまった人物がおる事は確かな事じゃ。…それがシリウスだという証拠が実に多く存在しており、それを認めざるを得ない状況なのも確かじゃが、そうであって欲しくなかったの。それさえ無ければシリウスを知っておる者ならば決してそんな事はせぬと彼を信じたはずじゃ。」
ダンブルドアは曖昧に答えただけだった。
「私は…」
レンは戸惑いながらも呟く様にそう言えば、ダンブルドアはレンの口から続きが紡がれるより早く口を開く。
「自分が信じる道を行けば良いのじゃよ。ワシはレンの選んだ道を、それを選んだ心を信じておる。いつか話せる様になったその時、ワシに話して聞かせておくれ。」
ダンブルドアにそう言われて、レンは「自分は間違っていないんだ」と、そう思う事が出来き、大きく頷いて見せた。
心のどこかでは、たいして話した事のないシリウスを、大切にしたいハリー達と喧嘩してまで…失いそうになってまで信じていられる自信もなかったのかもしれない…。
だが、ダンブルドアが「自分が信じる道を行けば良い」そう言ってもらえる事で、そう信じてもいいのだと…いつかはハリー達も信じてくれる…そう元気付けられた様な気がした。
「そうじゃ。そうやって微笑んでいるレンの方がワシは好きじゃよ。」
いつの間にか口元が緩み笑っていた事にレンは驚き、少しだけ頬を紅くすれば、ダンブルドアは笑い声を上げた。
「昔のように作られた笑顔ではなく、そうやって笑っていておくれ。きっと母君もシャルもそれを望んでおろう。」
ダンブルドアは、孫を見るかの様な眼差しでレンを見つめればゆっくりと髪を撫でてくれる。
レンはそれが少し恥ずかしかったが、小さく頷いた。