レンはそれにニッコリと微笑み、2つのバスケットを片手にひとつずつ持ちながら先を急いだ。
闇の魔術に対する防衛術の教室の側にあるリーマスの為に用意された部屋は、ノックしても返事はなかった。
「リーマス?」とゆっくりと扉を開きながら中の様子を窺えば、カーテンが全て閉められ薄暗い部屋で、確かに人の気配がした。
鍵をかけていないのか、それともレンには開く様になっていたのかは判らないが、鍵が開いていたその事実を、入っても良いと解釈すれば、ゆっくりと部屋の中に入り扉を閉める。
中を窺えば、ベッドにふくらみを見つけ、リーマスは眠っているのだろうとレンは思った。
枕元の小さなテーブルには、スネイプが持ってきたであろうゴブレッドが置いてあり、中身は空だ。
近くに寄り様子を窺おうと思ったが…もし狼の姿だったら、リーマスは自分にその姿を見られたいと思うだろうか…?
自分が狼人である事をついこの間まで言う事が出来なかったのだ…。
もしかしたら姿を見られたくないかもしれない…。
レンはそう思うと、様子を窺うのは止めておこうと近くのテーブルの上にリーマスのバスケットを置いた。
中には入っていた小さな花束を、花瓶にいけて再度リーマスに声をかける。
「リーマス?お食事、持ってきたの。折角のクリスマスでしょう?此処に置いておくから、食べられる気分になったら食べてね?」
「有難う…」
そう掠れた声で返事が返ってくれば、レンは安心しながらも、心配だった。
「具合は大丈夫?」
「…大した事はない…いつもの事なんだ…。」
リーマスは全身を布団の中に潜らせたまま身動きせずにレンの言葉に返事を返してくれる。
気分が悪そうで掠れた声色にレンはそれ以上声をかける事が出来なかった。
近くのテーブルにあった紙に「食事の時、ダンブルドアが用意したクラッカーをスネイプが鳴らせば、中からハゲタカの帽子が出てきたの。折角のクリスマスだし、記念にどうぞ。スネイプ以外皆被ったのよ。」そう手紙を書置き、その隣に自分が被っていた帽子を置けば、ゆっくりと扉に向かって歩く。
「レン」
声をかけられ、レンは返事をしながら振り返るが、リーマスが顔を出した様子はない。
「なぁに?」
「有難う。」
「うん。リーマスの声が聞けて良かったわ。少しの間、私には判らない辛さがリーマスにはあると思うけど…元気になったらまたお茶でも一緒にしましょうね?私待ってるわ。」
レンがそう言えば、少しだけ明るい声色で「勿論だよ」と答えてくれたのに、レンは胸を撫で下ろした。
「それじゃ、またね。お大事に。」
レンはそう言い、部屋を後にした。