届けるだけ届けたら直ぐに帰ろう…レンはそう思い、取っ手を銜え直すと階段を上った。
きっとこれだけで少しは痩せたのかもしれない…ダイエットを気にする人にお勧めできる方法だ。
ただ少し、顎が外れそうな思いをする羽目にはなるが…。
レンはそんな事を考え始めた頃、やっとシリウスがいた部屋に着き、部屋の前で待つクルックシャンクスの姿が見えた。
レンが着いたのを確認すると、彼はそのまま部屋の中に入って行き、甘える様な鳴き声をもらす。
「また来たのか…」
そう言うシリウスの優しい声が聞こえる。
レンは心臓が煩いほど速く鳴るその音に、一度深呼吸をしてからゆっくりと中に入って行った。
レンのその姿にシリウスは驚き警戒を露にした。
どうか怒られませんように…
レンはそればかりを心の中で唱え、持ってきたバスケットをその場に置き、ドアまで歩いて行く。
その一部始終をシリウスがじっと見ているのが判る。
視線が突き刺さる様で、早くこの場から立ち去りたい…そんな気持ちでいっぱいだった。
「待て。」
シリウスのその言葉に思わず立ち止まってシリウスの方に顔を向けてしまった。
言葉が判らないフリをして立ち去れば良かった…そう思った時はもう遅かった。
鋭い視線が向けられて、レンは動けずに固まってしまう。
こんなにも緊迫した場所にいる事は今までの人生で体験しなかった事だろう…。
何も話さずただ見つめるシリウス…それから視線を逸らして立ち去れば良い…それだけの事なのに…体が動かなかった。
「誰だ…?」
シリウスも目の前にいる犬が動物もどきだと気付いたのだろう…意を決した様に声をかける。
レンは大きく息を吸い込んで、気持ちを落ち着かせてから魔法解いた。
犬の姿がゆっくりとレンの姿に変わっていくのと同時に、シリウスの瞳も驚いた様に丸くなっていく。